皐月賞はクラシック三冠の緒戦。角居厩舎では2010年にヴィクトワールピサがこのレースを勝っているが、彼を語るレースはやはりドバイや有馬記念になってしまう。それはなぜか。数々の名馬を世に送り出した調教師・角居勝彦氏による週刊ポストでの連載「競馬はもっともっと面白い 感性の法則」より、様々な可能性を秘めた馬たちが集う皐月賞について解説する。
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大目標はやはりダービー。ダービーを目指す馬が皐月賞で勝てれば三冠が見えてくる──というイメージでしょうか。4着馬までにダービーの優先出走権を得られることもあり、どうしても注目度が割引される。
ですが、馬にとっては一生に一度の大舞台。そして皐月賞ならではの妙味があります。薫風になびく新緑のように、揺れ動く魅力といいましょうか……。
成長過程の3歳馬。いわば中学1年か2年生の競走です。スピード自慢ながら、自分の適性能力がまだはっきりとしていない時期です。
舞台も揺れている。中山の芝は最終週で荒れ模様だし、冬から初夏へ、雨も増えて馬場が重くなるタイミングです。堅い芝を軽く走る速い馬も通用しそうだし、パワーもスピードもある馬でも行けそうだし。適性が見極めにくいのです。
それだけに、様々な可能性を秘めた馬が集まってくる。“ごった煮”と言ってもいい。それはそれで食材の味わいが絡み合って美味しい。
角居厩舎の皐月賞初参戦は2009年のトライアンフマーチ。前走の若葉Sでようやく出走権を取り、8番人気ながら2着と好走しました(1着はアンライバルド)。桜花賞馬キョウエイマーチの子供で潜在能力が高く、スピードに勝ちすぎたところがあり、主戦の武幸四郎と共に調教に苦労した思い出があります。
続くダービーでは14着。菊花賞も9着でした。その後はマイル戦、1400メートル戦でオープン勝ちしています。重賞では2010年マイラーズCで2着、同年安田記念は4着。7歳になっても京都金杯で連対するなどマイラーの適性がありましたが、3歳時点ではやはりクラシックにこだわりたかった。