夏場になると飲食店でよく見かける「かき氷はじめました」の張り紙。あの光景を連想させるように、いま総合病院や町の内科クリニック等で、「禁煙外来はじめました」と告知する医療機関が増えた。
それもそのはず。医師のアドバイスを受けながら禁煙補助薬や皮膚に貼るニコチンパッチなどを使って“卒煙”を目指す禁煙治療は、2006年より保険適用になったことで治療費の自己負担が軽減した。
それまで実費で4万~6万円かかっていた医療費が1万~1万2000円程度で済むため、「医者を頼ってでも禁煙したい」と望む患者が増加。禁煙外来を設置する保険治療施設も増えているというわけだ。その数は1万6000施設を超えるとみられる。
さらに、診療報酬の改定により、今年4月から保険適用条件が緩和された。保険を使って禁煙治療を受けるには、〈1日の喫煙本数×喫煙年数〉が「200以上」という条件がついていたが、34歳未満の患者はこの数値が除外された。若いうちから禁煙を促し、将来の病気リスクを下げたい狙いがある。
しかし、禁煙治療がどのくらい効果をあげているかを調べてみると、「成功率」は決して高くない。
厚生労働省が禁煙治療を受けた3471人を対象に調査(2009年度)したところによると、12週間のうちに計5回診察が必要な「禁煙治療プログラム」をすべて終了した人は半数以下の1231人しかおらず、途中で治療を断念した患者が多いことが分かった。しかも、回数にかかわらず治療終了9か月後に、禁煙を継続している人は29.7%しかいなかった。
また、今年1月に発表された米国の研究では、驚くべき事実が明らかになった。ウィスコンシン大学医学部の研究チームが、2012年5月~2015年11月にかけ、喫煙者1086人を対象に禁煙補助療法の有効性を調べたものだ。
被験者を【1】ニコチンパッチのみ(241例)【2】禁煙補助薬のバレニクリンのみ(424例)【3】ニコチンパッチ+ニコチントローチ(421例)の3グループに分けて治療を受けさせ、26週後の「7日間禁煙率」を調べた。
その結果は、【1】22.8%【2】23.6%【3】26.8%──。日本と同じく禁煙成功者が3割にも満たなかったうえ、どの治療法を選択しても有意性はさほど変わらなかったのである。