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ゴールデン街火災 キリンビール営業有志が200店見舞訪問

延焼が少なかったのは不幸中の幸い

 昭和の香りが色濃く残る街並みもこれまでか──そう思うほど、ものすごい炎と煙に新宿ゴールデン街の一角が包まれた。人々を騒然とさせた火災が起こったのは4月12日の午後1時過ぎ。幸いにも死者はなかったが、火は300平方メートルに及び、10数店舗が焼け、午後6時頃に鎮火した。翌13日には66歳の男が建造物侵入で逮捕され、放火が原因とする見方が強まった。

 だが、そんな火事騒動の裏で、実はある“熱い戦い”が繰り広げられていた。ゴールデン街でバーを営むあるママがいう。

「午後7時すぎかな、キリンビールの営業の方から、『この度は……』って『近火御見舞』と表書きされたタオルをもらったんです。近くの駐車場に、スーツに紙袋を持った集団がいたので、何の集まりかと思ったら、お見舞いを配る営業団でした。さすがの手際の良さだと思いましたね」

 別の店のママが語る。

「店を開けてしばらくしてから、『キリンビールです。近火お見舞いをお持ちしました』とやってきました。若い営業マンらしくて、『こちらはご無事でしたか?』と緊張気味でした。『うちはキリンを30年とってます』と言ったら、すごい喜んでくれて、『ご挨拶差し上げてもよろしいですか』って、名刺をくれました。『なにかありましたら、よろしくお願いします』って。まあ、顔出してくれるから、悪い気はしないわね」

 キリンビールマーケティング東京支社広報部はこう話す。

「担当エリアの支店の有志8人が、火事のあった当日の午後6時半には現地に集合してゴールデン街のお店、約200店舗に近火お見舞いをお配りしました。エリア密着の営業をしていますので、お得意様の安否の把握とお見舞いの気持ちからです。こうした盛り場での火事の時は、お得意様がいますので、今回のように回ることはあります。スピード重視でやっていますね」

 なお、日頃は激しいビール戦争を繰り広げるライバル会社は、

「伺ったのはセールス担当者だと思いますが、(一軒一軒ではなくゴールデン街の)代表者の方のところだけになります」(サントリーホールディングス広報部)

「13日に、取扱店を中心に、新宿支店のメンバーでお見舞いに行ったそうです」(アサヒグループホールディングス広報部門)

「地区の担当者が、お付き合いがあるところにお見舞いをお持ちしているのは12日からで、訪問はいま(14日時点)も続いています」(サッポロホールディングス広報室)

 と回答した。各社、火災後の対応は迅速だったようだが、店舗を回ってみるとキリンビールからの「近火御見舞」を受け取ったところが圧倒的に多いようだ。

 ビール大手4社のビール系飲料の出荷量では、6年連続でアサヒに首位を明け渡しているキリン。ゴールデン街での“お見舞い作戦”が王座奪還への布石となるか。

※週刊ポスト2016年4月29日号

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