谷原章介、43歳。今、彼をテレビで見かけぬ日がない。情報番組『王様のブランチ』(TBS系)の司会は、今年で10年目。クイズ番組『パネルクイズ アタック25』(朝日放送・テレビ朝日系)や、『きょうの料理』(NHK)など長寿番組の司会でも存在感を示す。この4月からは新たに音楽番組『うたコン』(NHK)の司会を務める。
4番組の司会に加え、4月22日からは主演の連続ドラマ『金曜8時のドラマ ドクター調査班~医療事故の闇を暴け~』(テレビ東京系)の放映も始まる。いったい谷原章介は、なぜもてはやされるのか。
モデル出身だけに高身長でイケメン。低く落ち着いた声。おまけに6児の父という安心感。これだけプラス要素があれば、人気も当然だろうと毒づきたくなるかもしれないが、谷原章介の強みはそこにはない。彼は、“気遣い”の人なのである。それも、ちょっとした気配りのレベルではない。
「浮いている子に目が行ってしまいます。ミスが目立って怒られやすい子、元気な子たちの中でひとりだけ沈んでいる子……。それは出演者だけじゃありません。テレビ番組を支えているのは、裏方さんたちです。『今日は、サードADの子、がんばってるかな』とか、そういうことが気になります」
サードADとはいわば、いちばん下っ端の裏方だ。谷原はそこに視線を向ける。ただ声をかけるとか、そういうレベルではない。女性が多い現場ともなると、下手な声かけは嫉妬も生みやすい。谷原は「浮いている子」に気づくと、ディレクターに声をかけ、「○○さん、元気なさそうだけど、どう?」とスタッフを通してケアをする。
「なぜそんなに気遣うのか? そうですね、僕自身が浮いていたことが大きいかもしれませんね」
谷原は、“いじめられっ子”の過去を持つ。
「中学生の頃の僕って、『俺がやりたいことをやる』って勝気にグイグイやっていました。その頃は身長も140cmちょっとで、チビで生意気(笑い)。皆、僕の言うことを聞いてくれていると思ったら、ある日突然、全員にそっぽを向かれたんです。シカトですね。中学校の3年間、ずっと浮いていました。唯一、Nくんという子だけが声をかけてくれて、嬉しかったなあ」
谷原はこの時の経験を「良かった」と振り返る。
「この時に、鼻っ柱をへし折られたことで、今の自分がある。もし気づかずにずっと来て、今折られたとしたら、どうにもならないかもしれない。早く折られたことに今では感謝しています」
実は谷原は、こう見えて芸能界に入ってからの下積みも長い。20歳で『メンズノンノ』の専属モデルとなり、23歳で俳優デビュー。ここまでは順調だ。だがここから急に、しぼんでいってしまう。仕事のオファーが数か月間ないこともザラ。それどころか27歳の頃には1年近くまったく仕事がなかったという。
「横浜の実家で暮らしていたから、何とか仕事を続けられたようなものです。20代の頃は、実力も運もなくて、仕事もない。天・地・人、何もなかったですね(笑い)」