3月末に公正取引委員会は朝日新聞に対し「押し紙」問題で「注意」を行なった。新聞販売店からの訴え(タレコミ)があったのだという。押し紙とは、新聞社が販売店に実際の宅配部数以上の新聞を押しつけて買い取らせること。販売店は折り込みチラシの利益で買い手のいない新聞代を支払い、見せかけの公称部数を支えてきた。だが、押し紙は独占禁止法で禁止されているうえ、発行部数の水増しは広告主に対する詐欺行為にあたるとして問題視されてきた。
これに先立ち、2月15日、杉本和行・公取委委員長は日本記者クラブで行なった記者会見で「公取委は押し紙を禁止しており、きちんとモニターしているところだ。実態がはっきりすれば必要な措置をとる」と発言していた。この発言の前に朝日新聞のO記者が、販売店へ行った時の話をもとに、杉本氏にこう質問したのだ。
「私が見聞きしたところだと、25%から30%くらいが押し紙になっている。どこの販売店主も何とかしてほしいのだけれど、新聞社がやってくれない。おそらくこれは朝日に限らず、毎日、読売、日経もみな同じような問題を抱えていると思うのですね。そこで押し紙の問題については委員長、どのようにお考えになっていますか?」
朝日の記者が自社の押し紙という不正行為を暴露して当局の見解を求めたのだから、会見の場を利用した“公開内部告発”というほかないだろう。
一体、朝日に何が起きているのだろうか。O記者も質問の際に言及していたが、朝日新聞は慰安婦報道の検証記事(2014年8月)をきっかけに部数を大幅に落とした。
日本ABC協会調査によると、同年6月に約740万部あった部数が社長の謝罪会見後の同年10月には約700万部とわずか4か月間で40万部減らし、現在は約660万部まで落ち込んでいる。購読者から契約を打ち切られた販売店は当然、本社に買い取り部数の削減を要求し、それが認められずにトラブルが増えて公取委への“タレコミ”につながった──というような経緯が想像される。