「弟が父を裏切って経営権を奪い、兄を解任したために、グループのイメージが失墜し損害が発生している」(兄側の弁護人)
「兄の解任は取締役としての業務をおろそかにし、経営能力が足りなかったためで、父の経営哲学は優れた成果を出している息子が跡を継ぐというものであり、弟が経営権を継承するのは正しい」(弟側の弁護人)
日韓をまたいで総売上高9兆円に迫るロッテグループのお家騒動は、ついに韓国での法廷闘争にもつれ込んだ。兄が弟に損害賠償を求めた訴訟の第一回口頭弁論が4月4日、ソウル中央地裁で開かれたのだ。
ロッテはこれまで、創業者の重光武雄(韓国名・辛格浩)氏が長男・重光宏之(韓国名・辛東主)氏に日本法人、次男の重光昭夫(韓国名・辛東彬)氏に韓国法人の経営を任せていたが、弟の昭夫氏の権限が強まったことで均衡が崩れた。
昨年7月、起死回生のために兄・宏之氏が父・武雄氏をソウルから連れ出し、東京・新宿のロッテ本社に突入。その場にいた取締役に「武雄会長を除いた取締役6人を全員解任する」と宣言し、クーデターを起こした。
ところが、弟・昭夫氏は翌日、緊急取締役会を招集し、前日の解任が不当であるとし、武雄氏の会長解任を決定(名誉会長へ)。父と兄が追い落とされるという衝撃の展開を迎えた。
こうしてグループを追われた兄の宏之氏の次の一手が、訴訟バトルだった。今回を皮切りに、韓国と日本で15件もの訴訟を争っていくという両者。第一回から早くも弁護人による舌戦が繰り広げられているが、韓国では「今後、法廷でスキャンダル合戦になってしまうのではないか」と危惧されている。
「ロッテは日本での持ち株会社のロッテホールディングス、韓国での実質的な持ち株会社のホテルロッテともに未上場のため、株主構成や資金の流れがわかりにくい。
2014年には父・武雄会長が韓国の金融当局に申請せずに日本の韓国系銀行から巨額送金を受けていたことが不正送金や所得隠しではないかと見られて当局が調査に乗り出したことがある。それだけに劣勢の兄、宏之氏が窮鼠猫を噛むで、何らかのスキャンダル材料をぶつけてくる可能性はある」(韓国のメディア関係者)