ここにひとり、愛する人を亡くしたが、前を向いてゆっくりと歩き出した人がいる。「えみる、天国の成人式はどうでしたか? お酒はどんな味でしたか?」──。9年前に10才という若さで亡くなった長女の仏壇に毎朝手を合わせているという風見しんご(53才)。仏壇に向かって語りかけた相手は、生きていれば20才の誕生日を迎えるはずだった愛娘、えみるさんだ。
“えみる”という名前には「笑顔で満ちる子になってほしい、健康で明るい子供であれば」との願いが込められている。その名の通り、学校でもムードメーカー的存在だったえみるさんだが、2007年1月、自宅からわずか3分の場所で交通事故に遭い、帰らぬ人となった。青信号の横断歩道を渡っているときに、通行禁止のはずのスクールゾーンから飛び出してきたトラックの下敷きになったのだ。
現在、『ノンストップ!』(フジテレビ系)や『噂の! 東京マガジン』(TBS系)などで明るく元気な姿を見せている風見。彼はこの悲劇をどのように乗り越えたのだろうか。
「えみるを失ってからしばらくは、四六時中えみるのことを考えていました。ロケで街に出かけても、10才くらいの女の子を見ると、『もしかしたらえみるじゃないか?』と思ってしまったり、えみるが事故に遭った日の放課後、新体操の教室に行くために玄関に準備していたバッグをずっと片づけられずにいたり…。
正直、えみるの死後は表向きにはがんばっているようにふるまっていたけれど、内心では『もうどうでもいいや』と思っていたんです。よく、『時間が経てば悲しみは薄れる』といわれるけど、幼いわが子が先に逝くとなると、時間では解決しない。むしろ時間が経てば経つほど、えみるにはもう会えないという現実を受け入れなくてはいけないことがわかってきて、心が折れてくる。ふっきることなんて、絶対にできないんですよね」(風見、以下「」内全て同)
そんな中、えみるさんの一周忌から数か月経ったある日のこと、風見の妻・尚子さん(48才)のお腹に新しい命が宿ったことがわかった。
えみるさんと7才違いの妹・ふみねちゃん(12才)は、お姉さんの死を幼いながらも敏感に受け止め、悲しみにくれる大人に気を使っているようなところがあったというが、「おもちゃはいらないからきょうだいがほしい。できるものならお姉ちゃんがほしい」と無邪気に言っていたという。風見は「妻の妊娠を知ったときのふみねの喜びようはすごいものでした」と振り返る。