芸能

NHK朝ドラ『とと姉ちゃん』 過去の失敗作と共通点も

番組公式HPより

 前作が大好評であったゆえに比較されるのは仕方ないだろう。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏がNHKの朝ドラについて指摘する。

 * * *
 NHK朝の連続テレビ小説『とと姉ちゃん』は視聴率を見ると好調な滑り出し。1週目、2週目とも放送された回はすべて20%を超えたとか。冒頭の子役たちや父(西島秀俊)も注目も集め、宇多田ヒカルの主題歌が耳に心地よく響く。

 スタートからまだ1か月にもならない。未知の楽しみもたくさんあるから、即断はしたくない。ただ一つだけ、気になってしまう点がある。それは、短い期間にやたら「事件」が多発していることだ。

 よっぱらった闖入者が絵を置き忘れる。その絵に幼い姉妹が落書き。あとから贋作とわかって一件落着。親戚である闖入者が、家族の米を勝手に食い尽くす。困った家族は運動会の賞品=米を得ようと出場。一位になれなかったが、なぜか米をもらって一件落着。大家が、母・君子(木村多江)に「妾になること」を提案。子どもたちは混乱……。

 いずれも同じパターン。「やっかいなことが家族の中に入ってきて、突拍子もない出来事を生む」。それが連発。これから半年間、このパターンが続くかもしれないと思うと、ちょっとつらい。

 このドラマを見ていると改めて、「家族の日常」を描くのは難しいことだと考えさせられる。日常の大半は、「何も特別なことが起こらない」時間だから。その中で一人一人の個性を描き出し、夢や意志や優しさ、つらさ、苦闘や矛盾を描き出すためには相当の筆力と哲学がなければならないだろう。

 大好評を得た前作『あさが来た』はどうだっただろうか。江戸から明治へと時代が変わり大波乱の時代背景を上手に使いつつ、翻弄される両替商という舞台の上で、時代に影響されつつ生きる家族一人一人の姿を描き分けていった。妙にトリッキーな方法など使わず正攻法で。巧みな筆さばきだった。

 一方、『とと姉ちゃん』は、今のところ時代背景や社会的出来事の方はあまり目立たず、家庭・家族内に焦点を合わせている。その日常の中でいかにドラマツルギーを作り出すか。そこに、「出来事主義」が台頭してくるのだろう。思いついたような出来事を挿入し、家族に波紋を起こし結末を作り出す、という手法が。

 ところが、そうした手法は多用しすぎれば騒音になる。特に毎朝放送されるNHK朝ドラでは、有効に働かないことはすでに『まれ』や『純と愛』の失敗で証明済みと言えるかもしれない。

 もちろん期待もある。『とと姉ちゃん』にはモデルがいる。ヒロイン・小橋常子は戦後の名雑誌『暮しの手帖』創業者・大橋鎭子がモデル。今後、出版社の話になっていければ唐突な出来事主義は減り、ユニークな雑誌を創刊することの苦労や試行錯誤、といった独特の世界を見せてくれるはず。

 大丈夫と思いたい。そう期待したい。

関連記事

トピックス

歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン