イラクでの難民支援活動を続けている鎌田實医師は、難民と東日本大震災での被災者には共通の健康問題があると指摘する。共通する原因と対策方法について、鎌田医師が解説する。こうした指摘は熊本の地震でも当てはまる部分はあることだろう。
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イラク北部のクルド自治区の主都アルビル。その町に、コンテナを利用した急ごしらえの診療所がある。マルチシムーニ教会クリニックなど4つの診療所だ。
2014年6月、イラク第二の都市モスルが過激派組織ISに制圧。このとき、数万人の住民がアルビルに流れ込んだ。一時は、教会や学校のグラウンドに野宿する人たちであふれかえった。
命がけで逃げてきて、体調を崩す避難民も少なくない。この人たちを何とか助けたい、とイラクのドクターからSOSが入った。
ぼくが代表を務めるNPO日本チェルノブイリ連帯基金(JCF)は、イラクの小児がんや白血病の子どもたちの支援に12年間、取り組んできた。SOSにこたえ、急きょ、アルビルの町に4か所、診療所を開設する支援を開始した。
診療に欠かせない薬や医療機器は、日本の外務省の助成を得ながら寄付を募り、年間1600万円かけて供給するようにした。
問題は、人手だった。クルドの医師や看護師たちは手いっぱいで支援に入れない。そのとき、自ら手を挙げたのが、モスルから逃げてきた避難民の医師や看護師、薬剤師だった。
「私は医者だ。人々の命を救わなければ」
産婦人科のドクター・ハナは、モスルからアルビルにたどり着いたとき、小さなテントの中で、熱を出して死にかけている子どもを見た。自分が医師であることを思い出した瞬間だったという。