NHK大河ドラマ『真田丸』。その魅力の一つが、三谷幸喜・脚本が描く個性豊かな武将たちのキャラクターだ。戦乱の世を生き抜いた彼らの「末裔」を訪ねた。
堺雅人演じる主人公・真田信繁(幸村)は、1615年、大坂夏の陣で圧倒的に不利な戦況の中、3500の兵を率いて徳川家康の本陣まで攻め込んだ「日本一の兵(ひのもといちのつわもの)」として知られる。ところが、400年が経ち、その“関係”にも変化があるようだ。
「徳川を追い詰めた信繁とは逆に、私は家康の子孫である徳川記念財団の理事長に対面したときはその威厳に圧倒されました(笑い)」
そう語るのは信繁から数えて14代目、仙台真田家当主の真田徹氏(67)である。建設会社を65歳の定年まで勤め上げた徹氏は現在、信州上田観光大使としての仕事に励む毎日だ。
「信繁は1615年の大坂夏の陣で討ち死にしました。しかし生前に仙台藩伊達氏の重臣・片倉重綱に次男・大八と4人の娘たちを託している。その大八の子孫が私ということです。
大八は『端午の節句の折、合戦ごっこを見物中に投石にあたって7歳で死亡した』との書物が残っていることから信繁の血筋は絶えたとする歴史家もいるのですが、当家9代目の真田喜平太が明治期に編纂した仙台真田家の略系によれば、大八は片倉守信と名乗り伊達藩の藩士として家を起こしました」
実は、こうした経緯があるために、徹氏には「本当に真田の末裔なのか」と疑問が投げかけられることもあるという。加えて仙台真田家では「真田六文会」という集まりを設けていたこともあり、真田信幸の子孫で、真田家14代目当主の真田幸俊氏(47)を中心とする「真田会」では信幸側の子孫と同席したことはないのだという。
ドラマでは大泉・堺のコンビが性格は全く違えど互いを信頼し合う兄弟を演じているだけに、視聴者としては、子孫同士の交流がないと聞くと複雑な気持ちになる。徹氏は『真田丸』の信繁をどう見ているのか。
「堺雅人さん演じる信繁は次男坊ゆえの天真爛漫さが出ていて良いんじゃないでしょうか。ちなみに私は信繁の最初の妻・梅を演じる黒木華さんの大ファンなんです。彼女が亡くなってしまうシーンはショックでした……」
“好きな女優が先祖の妻を演じる”という状況は、末裔にしか味わえないものだ。
※週刊ポスト2016年5月6・13日号