「カメラマンによって色々あるだろうけど、僕はああしろ、こうしろとはあまりいわない。表情にしろ、仕草にしろ、流れの中でモデルの動きに任せる。作りでやると、意外な写真が撮れなくなるからね」
その意味で、『ワカパイ』の呼び名で一大ブームを巻き起こした井上和香は、阿吽の呼吸が取れた一人だ。
「唇がチャームポイントだと本人もよくわかっていた。自分の魅力をわかっている子は助かる。だって、『唇を半開きにして』なんて恥ずかしくていえないでしょ(笑い)。撮る方も撮られる方も、そういう言葉が出たらつまらない撮影になっちゃう」
一方で、小池栄子は異色の存在として渡辺氏に強烈な印象を残している。
「僕のことを初めて呼び捨てにした子(笑い)。『タツオ!』ってね。思わず、『はい!』っていっちゃいそうになったよ(笑い)。竹を割ったようなさっぱりした性格の子で、大好きだね」
こうして名だたる女優・アイドルを撮り続ける渡辺氏には、ひとつの信念がある。
「グラビアにマニュアルなんてない。予定調和ほどつまらないものはないよ。見てくれる人が満足してくれればそれでいい。かわいいという概念は時代ごとに変わる。宮沢りえもかわいかったし、上戸彩もかわいかった。『週刊ポスト』の表紙などで何度も撮影させてもらったけど、本当にいい表情を見せてくれた。これからも、その時代、時代の女性の一番いい表情を撮っていければと思っています」
※週刊ポスト2016年4月29日号