出版した写真集は217冊、雑誌も含め撮影したモデルは4000人以上──。写真家歴40年以上の渡辺達生氏が、女優・アイドルとの忘れられない撮影秘話を明かす。
渡辺氏はただ撮るだけでなく、様々な方法でモデルの美しさを引き立ててきた。1986年、『スケバン刑事III』でブレイクした大西結花は1995年にヌードになった。(以下、「」内の発言は渡辺氏のもの)
「2月のフランスで撮影した。一番寒い時期で、しかもお城の石畳で撮ったから冷たかったと思うけど頑張ってくれた。昔は行きたい場所に行けたし、時間もじっくりかけることができたから、現場でいろんなアイディアが浮かんだものです」
1983年、『オールナイトフジ』の司会で有名になった秋本奈緒美も、29歳の時にヌードになった。彼女の写真集には変わった1枚が含まれている。シャツを1枚羽織っただけの秋本が、ビーチで「逆立ち」しているのだ。
「スペインのイビザ島のビーチだね。逆立ちしている時って必死になるからウソの顔ができない。その瞬間に『こっち向いて!』といわれると、倒れる以外ない。そんなふうに砂まみれになると、素の表情が撮れる」
ハワイの砂浜で同じく逆立ちをさせた青田典子は写真集発売当時、〈カメラを意識せず力を抜いて、テレビでは見られないありのままの自分を出すことができました〉と話している。やはり効果は抜群のようだ。
「逆立ちはほんの数秒で、何ページ分も使えるしね。青田はほぼすっぴんに近い状態で撮った。メークとすっぴんに差がない綺麗な子だったね」
水中のケースもある。石田ひかりだ。
「僕がプールに潜って待って、そこに飛び込んできてくれた。伸びやかで綺麗な写真が撮れたよ。『水中では目を開けてカメラ見て』といったら、水中眼鏡もしてないのに、はっきりレンズの方を見て笑顔まで作れた」
渡辺氏がこうして撮影中に指示を出すことは稀だという。