いま中国では、いたるところで、給料の未払いや劣悪な労働環境に抗議する労働者のデモやストライキが頻発している。中国政府の公式統計では昨年の1月から9月までの9か月間で1万1000件以上。香港に本拠を置く、中国の労働運動の調査機関「中国労工通信(CLB)」の調査では、昨年12月1日から春節(旧正月=日本の正月に当たる)の2月8日までの2か月間で1050件も発生している。中国はどこへ向かうのか? ジャーナリストの相馬勝氏がリポートする。
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いま様々な矛盾が中国社会で噴出している。転職サイト「智聯招聘網」の世論調査によると、今年の春節を前に「年末のボーナスがなかった」との回答が全体の66%に達したほか、ボーナスをもらった人でも全体の11.7%が「5kgの豚肉セット」や「売れ残った月餅」「白酒1瓶」「汽車のチケット」「本」「カラオケのサービス券」「米」などの現物支給だったというから深刻だ。それだけ、実体経済は厳しいことを示している。
このようななか、著名な投資家であるジョージ・ソロス氏は1月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で「中国経済がハードランディングし、世界的なデフレにつながる恐れがある」との見通しを示したうえで、「これは可能性ではない。すでに、起こっているのだ」と発言したことが国際的に大きな反響を呼んだ。
安倍晋三首相の経済顧問で内閣官房参与の本田悦朗・次期駐スイス大使も米金融経済通信ブルームバーグのインタビューで「ハードランディングの可能性が高い」と答えている。さらに、安倍首相も3月2日の参議院予算委員会で、中国経済は「過剰設備、過剰信用といった構造的な問題を抱えている」との悲観的な見方を示した。
こうした懸念に対して、李首相は全人代最終日の16日の記者会見で、「中国経済はハードランディングしない。なぜならば、中国経済は大きな潜在力を有しており、人々は無限の創造力を有しているからだ」などと述べて、従来の労働集約型から、新たに知識集約型の経済構造に変革するとの見通しを示した。