視聴率好調のNHK大河ドラマ『真田丸』。三谷幸喜・脚本が描く個性豊かな武将たちのキャラクターが魅力的だ。そこで戦乱の世を生き抜いた彼らの「末裔」を訪ねてみた。
上杉邦憲氏(73)は、上杉謙信から数えて17代目。『真田丸』では謙信の養子として家督を継いだ上杉景勝(遠藤憲一)が活躍する。
「役者によってイメージが違ってくるし、歴史を知っている者としては違和感を覚えることも少なくない。だから大河ドラマってあんまり観ないんです。それでも、『真田丸』で遠藤憲一さんが演じる景勝は、2009年の『天地人』で北村一輝さんが演じたときに比べて落ち着いた感じで、我々のイメージに近い」
東京生まれの邦憲氏は東京大学大学院で学んだのち、文部省宇宙科学研究所へ。その後、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の発足に伴い、本部教授としてロケットの開発に従事した。小惑星探査機「はやぶさ」の開発ミッションではプロジェクトマネージャーとして全体を指揮した。
「JAXAでの研究開発は、私が上杉家の何代目かなんてことは一切関係のない世界。ですが、仲間たちはみんな私の出自を知っているので、冗談半分で“殿”と呼んでいました。アメリカにいたころは現地のエンジニアが『UESUGI』をうまく発音できないので、勝手にニックネームを『TONO』にされていました。メールアドレスも『TONO』で始まるものを与えられたし、胸につける名札も『TONO』でした(笑い)」
謙信の末裔であるがゆえに、子供のころはつらい思いもしたという。
「私は東京生まれで、戦時中は米沢に疎開していました。米沢は江戸時代からの上杉家の地元で、小学校の先生も謙信公を尊敬している。おかげで何かあるたびに“謙信公の子孫なのに”と叱られました。当時は、先祖は関係ないだろって思っていましたよ(笑い)」
※週刊ポスト2016年5月6・13日号