アイドルの衣装といえば、子どものころに見たアニメの登場人物そのままにキラキラとふわふわで成り立っているイメージが強いでしょう。しかし、全国で数千人にのぼるといわれる地下アイドルの女の子達の衣装には、キラキラとふわふわだけではない女の子の本音が隠れています。そんな地下アイドルの衣装事情について、地下アイドルでライターの姫乃たまさんがリポートします。
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街を歩いていると、ふと、「あの子、地下アイドルだな」と、わかる時があります。地下アイドルの場合、見た目が少し派手なのも、街で目を惹かれる理由です。私も含め、あからさまに過剰な派手さはないのですが、服も靴もかばんも主張が強くて、ちょっと引き算できていない感じのコーディネイトになってしまうのです。足し算ファッションが珍しくない原宿あたりまで行くと、ようやく街に馴染む気がします。
しかし先日、街で偶然、メジャーでも話題になっている地下アイドルの女の子が、無地のパーカーにジーンズという、ものすごくシンプルな服装で歩いているところに出くわして驚かされました。思えば、以前みかけたキャリーケースにバックステージパスを貼っている地味な服装の女の子も、当時とてもブレイクしているアイドルグループのメンバーでした。
私はなんとなく、地下アイドル=私服が派手、と思い込んでいたのですが、これを機に改めて、ライブハウスで地下アイドルの私服と衣装を観察してみました。
そもそも地下アイドルはライブの本数が多いので、衣装もたくさん必要です。よく衣装はオリジナルか聞かれますが、予算も管理も製作も追いつかないため、たいてい既製品のワンピースを衣装で着ています。私のようにソロ活動している地下アイドルでは、既製品を利用する人は珍しくありません。先日、楽屋でも「衣装にできるかどうか考えて私服を買う」なんて甲斐甲斐しい話で、女の子達が盛り上がっていました。しばらく着た「衣装」は「私服」になるからです。
渋谷や原宿近辺にあるティーン向けブランドは、価格も手頃で、デザインも派手で地下アイドルの衣装にぴったりです。それらのブランドが新作を発表する季節の変わり目は、おろしたての同じ衣装になって笑い合っている女の子達を楽屋でたまに見かけます。あまりに重なるので「同じ服を持っている地下アイドルを集めてイベントをやろう」なんて冗談がでるくらい、衣装かぶりはよく起きます。私はそれを避けるために、新作の服は着ないようにしています。なんとなく気恥ずかしくて……。
もちろん地下アイドルの数だけ、服装の好みがあるので、一概には言えませんが、楽屋でみかける私服の好みと活動内容には一定の関連があるように思います。古着やリメイクなど個性的な私服の子は、楽曲が複雑だったり、カルチャー寄りのアイドル活動をしている印象が強いです。また、フリルやワンピースなど少女趣味な私服を好んでいる子は、王道のアイドルソングやアニメソングなど、ポップな楽曲を歌っている印象です。ロック調の激しい楽曲を歌っている子は、私服でも暗い色の服や、ボーイッシュな格好を好みます。そして、いつかは私服にすることを考えて衣装を用意しているので、アイドル自身の好みが衣装にもあらわれていることが多いです。
ライブが続くときは、なるべく同じ衣装を着るのは避けたいところですが、実際にはそうもいきません。といって半年も一年も同じ衣装を着続けていると、本人にとってもファンにとっても新鮮味がなくなるので、衣装をそっと私服にして着回します。アイドルの生活のなかで衣装がリサイクルされるため、彼氏と楽しそうにデートしている女の子の服装から、きっと「元」衣装を着ている元地下アイドルの子だろうとわかってしまうことも、ごくたまに起きます。