文部科学省が進めてきた「スーパーグローバル大学」(SGU)構想が、予定していた支援額が低く、各大学から「詐欺だ」と批判を浴びている。コラムニスト・オバタカズユキ氏が考える。
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民主党政権だった頃、内閣府に行政刷新会議が設置され、そこで連日のように「事業仕分け」の様子が報道されていた。行われたのは2009年の11月で結構前のことだから、もう忘却の彼方だという人も多いかもしれない。国家予算の見直しで、事業が必要か否かの判定を「仕分け人」たちが公開の場で下していった試みである。次世代スーパーコンピューター開発の予算削減に際し、蓮舫が「世界一になる理由は何があるんでしょうか? 2位ではダメなんでしょうか?」とバサバサ捌いて話題になったアレである。
当時の蓮舫のああした振る舞いが良かったかどうか、コトの是非は横におく。その上で実際にはありえない「もしも」の話なのだが、彼女が今も仕分け人であったら、ぜひとも捌いてほしい件があるのだ。スパコンの件は文科省予算の仕分けを担当していたわけだが、こんども相手は一緒。「スーパーグローバル大学」(SGU)構想を推進している文部科学省の担当者を吊し上げてもらいたいのである。
「朝日新聞によりますと、選出された当の大学からSGU詐欺だ、という批判の声があがっているそうです。同構想は失策だったのではないでしょうか。そもそも“スーパーグローバル”という和製英語は英語圏で通じません。直訳するとしたら、“超地球上の”? まるで意味不明です。日本人ですらよく分かっていない造語を内輪でまわしているだけ、つまり、その姿勢からしてグローバル時代から落ちこぼれているのではないですか?」
私は政治家としての蓮舫の支持者ではないが、言ってくれたらスッキリすると思う。大学改革を主導する中央の人たちがどれほどその道に不案内で、なおかつ、そういう頓珍漢なオカミの顔色ばかりを伺って「現場改革」に勤しんでいる大学がどんだけヒラメ人間の集まりなのか、白日のもとに生中継でさらしたらいいと思うのだ。文科省や大学にも当然、反論があるだろう。だったら、堂々とした公開議論をぜひ拝見したい。
SGU構想は、一昨年の9月にその選定結果が発表された。〈若い世代の「内向き志向」を克服し、国際的な産業競争力の向上や国と国の絆の強化の基盤として、グローバルな舞台に積極的に挑戦し活躍できる人材の育成を図るため、大学教育のグローバル化のための体制整備を推進する〉という文科省の大義名分のもと、旧帝大や筑波大、東京医科歯科大などの国立大と早慶の計13校を世界の大学ランキングトップ100入りを目指す「トップ型」に選定し、国が各大学に年4.2億円、10年間の財政支援をすることとなった。そこまで認められなかった24校は「グローバル化牽引型」とされ、同じく年間1.7億円の支援が決まった。
この選定の対象になるべく、多くの大学がグローバル的なカリキュラムを増やし、そのために組織改編もし、あれやこれや学内をいじくった。そのエネルギー総量は相当なもので、通常業務をこなしながら、オカミ向けの提出書類作成に忙殺される教員たちからの悲鳴がよく聞こえたものである。
鳴り物入りのSGU構想だったから、選定された大学は時代の波に乗った勝ち組としてのイメージを強く打ち出せるだろうと思われた。なので、私はこのNEWSポストセブンで、そこまでエネルギーを投じられない弱い大学と、強引にでもお墨付きをもらえる強い大学との格差が拡大するだけではないか、と批判的に書いた。
しかし、私は甘かった。選定結果の発表から1年半あまりで、まさかの「SGU詐欺だ」批判がおきていた。報じた朝日新聞によると、実際に2015年度の平均支援額は、「トップ型」で2億8800万円、「グローバル化牽引型」1億3100万円だったのだそうである。フタを開けたら少ないじゃないか、と選定された各大学が愚痴っているそうなのである。
要は、選定の対象になるために投じたコストのもとがとれそうにない、となったわけだ。なかには留学生の割合の数値目標を達成するために、留学生の授業料を減免していたのだが、その見直しを検討し始めた大学もあるという。SGUに選ばれたことを受験生集めで謳った宣伝費用ということで割り切ればいいのに、そこまで宣伝効果がなかったのだろうか。結局、その損を学生の負担増で埋めようとしている。