国内

高齢者の記憶力定着には「反復する」「人を巻き込む」

佐賀県立佐賀北高校の通信制を卒業し話題の陣内シヅ子さん(73才)

 73才女性・陣内シヅ子さんが、佐賀県立佐賀北高校の通信制をこの春卒業したことが話題になっている。73才という年齢で記憶を定着させるのはさぞ大変だったのではないだろうか。

 認知症になる高齢者は7人に1人といわれているなか、脳トレをするなど生活環境しだいでは「脳は老化しない」「記憶力は低下しない」などといわれて久しい。実際シヅ子さんの話を聞いていると、「高齢になると記憶力が低下していく」という通説のほうが疑わしく思えてこないか。

 ズバリ、専門家に話を聞いた。自然科学研究機構生理学研究所の教授で、『記憶力の脳科学』(大和書房刊)の著者・柿木隆介氏はこう説明する。

「年齢と記憶についてまず申しあげたいのは、脳は30才を過ぎてからしだいに萎縮していくこと、そして60才を過ぎたころから萎縮のスピードが速くなるということです。これはもう仕方ないことです。ですから“高齢になると記憶力が低下していく”というのは、確かにそのとおりです。

 脳のいちばんのピークは15~20才ぐらいですから、受験の時期は、いちばん記憶力がいい状態。年齢を重ねるうちに、まずは短期記憶を司る海馬がやられていきます。そして長期記憶を保存する側頭葉や前頭葉はゆっくりやられていきます。

 ですから昔のことは覚えているけど、新しいことがなかなか覚えていられない。そういう意味では、73才の女性が、試験をするなどして高校を卒業するのは大変だったと思いますよ」

 有酸素運動、人と話すといい、新しい刺激を与える…、そんな脳トレが、記憶力の低下を防ぐといわれてきたわけだが、柿木氏は、「これらの効果の科学的な証明は難しい」と言う。

「例えば認知症に指を細かく使うといいなどと本に書いてあったりしますよね。じゃあ、よく指を使うピアニストが認知症になりにくいかっていうと、そんな科学的実証はないわけです。

 納豆をたくさん食べるといいともいわれますが、納豆をたくさん消費する県の人たちが認知症になりにくいかといえばそんなこともありません。有酸素運動をしている人は認知症になりにくいという証拠もありません。

 もちろん運動もしないよりしたほうがいいですし、納豆も体にはいいでしょう。でもそれで記憶力が低下しないという科学的証拠を示すのは困難です。いろんな人とかかわって、新しい刺激を受けるというのも、これがストレスになる人には逆効果。これをやれば認知症予防になるという科学的証明を得ている方法はないのです。実際、認知症患者は減るどころか増えているんですから」

 ではシヅ子さんの脳の中では、いったいどういうことが起こっていたのか? 柿木氏によると、彼女の高校生活には、「記憶力を定着させる」ヒントがあるという。

トピックス

真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)
オフ突入の大谷翔平、怒涛の分刻みCM撮影ラッシュ 持ち時間は1社4時間から2時間に短縮でもスポンサーを感激させる強いこだわり 年末年始は“極秘帰国計画”か 
女性セブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン