横浜DeNAベイスターズ広報・PR部長の楠本淳氏
プロ野球の地上波中継が減り、野球離れが加速して人気が凋落するかと思いきや、球場へ足を運ぶ人は増えている。なかでも、急増ぶりを見せつけているのが横浜DeNAベイスターズだ。
2011年からの4年間で観客動員数は12球団最下位から1.6倍伸びて180万人を突破。稼働率は9割、ファンクラブ会員数は10倍以上になった。作家の山下柚実氏がこうした成功の背景と、横浜スタジアムの『コミュニティボールパーク』化構想についてレポートする。
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「今年もおかげさまで開幕戦から大入り満員が続きました」と横浜DeNAベイスターズの広報・PR部長・楠本淳氏(38)はにっこりと笑った。
「チケットの売れ行きは前年に比べ130%の勢いです」
でも、昨年のリーグ順位は最下位。監督も交代。普通なら人気が落ちるのでは?
「前半戦はトップを走っていましたし、チームはまだ若い。ファンの方々はこれから成長していく可能性、強くなっていく期待を共有し選手と一緒に変化のプロセスを味わってくださっているんだと思います」と楠本氏は言い、「実はベイスターズは12球団の中でも特殊な点があるんです」と続けた。
「それは、公園の中に球場がある、というロケーションです」
たしかに、横浜スタジアムはJR関内駅前、横浜公園の中に位置している。
「公園というのは特別な場所です。野球が好きか嫌いか以前に、そこに来ると楽しくなる場、癒される空間でなければならない。だから私たちのミッションも人を楽しませる場を創る、ということです」
ベイスターズを買収すると池田純球団社長は世界中のスタジアムを巡り始めたという。70か所ほどの視察を重ね、「コミュニティボールパーク」化構想を打ち出した。
「コミュニティボールパーク」とは聞き慣れない言葉ですが?
「いわば、球場そのものが娯楽になり、野球をきっかけにしてコミュニケーションが生まれる場を創っていこうというコンセプトです」
具体的にはどんな取り組みを?
「例えば野球の雰囲気と共に会話を楽しむ社交空間を作ろうと、座席を改修して5~6人のボックスシートを100ほど設置しました。ビールサーバー付きシート『スカイバーカウンター』や赤ちゃん連れファミリーも楽しめる『リビングBOXシート』などテーマ性を持たせたシートで、発売と同時に売り切れてしまうほどの人気です」
しかしシートの改修なら他球団も手がけているファンサービスの範疇かもしれない。
「さらに今季はベイスターズらしさを追求し約6000席を球団、そして横浜の色でもあるブルーに塗り替えました。また一塁側をベイ・サイド、三塁側をスター・サイドと呼称も変えて、より横浜らしい球場にしていきます」
なるほど、ポイントは「横浜という街のイメージとシンクロする球場」にありそうだ。街と球場の距離を近づける工夫もしている、という。
「公園に面した場所にコーヒースタンドやライフスタイルショップを作ったり、バックスクリーン下のゲートを常に開けて、公園を歩く人にも選手たちの練習風景が見えるようにしています」