ブリュッセルでの同時多発テロ事件の記憶が新しいが、ヨーロッパはいま、常にテロの脅威にさらされている。ジャーナリストの落合信彦氏が、テロ事件の背景に広がるテロリストのネットワークについて解説する。
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最近、背筋が寒くなるようなデータがオランダの調査研究機関「国際テロ対策センター」から発表された。
それによると、ヨーロッパからイラクやシリアに渡り、IS(イスラム国)などの戦闘員として加わったのはこれまでに4000人前後。そのうち3割に当たる1200人ほどが、すでに帰国しているというのだ。
しかも、4000人のうち、3000人近くが、イギリス、ドイツ、フランス、ベルギーの出身者だった。このうち2国ではすでにテロが起きている。イギリスとドイツでは、いつ大規模な同時多発テロが起きても驚くべきことではないだろう。何しろ1200人のテロリスト予備軍があちこちに潜伏しているのである。
ベルギーの事件が起きる4日前、パリのテロの容疑者として手配され、逃亡を続けていたサラ・アブデスラムがブリュッセルで逮捕された。サラが潜伏していたのはブリュッセルの西に位置するモレンベークと呼ばれる地区だ。この地区にはモロッコ系移民をはじめとするイスラム教徒が多く住み、貧困層が多いことでも知られている。そして、カラシニコフなどのテロリスト御用達の銃器が密売され、麻薬などの取引でも有名な場所だ。
つまり、テロリストを支援し、逃亡の手助けをするネットワークがベルギーに築かれていることになる。