長年“赤プリ”の呼び名で親しまれ、2011年3月末に閉館。その後、西武グループが980億円もの巨費を投じて建て替えていた旧「グランドプリンスホテル赤坂」が、装いも新たに完成した。
地上36階(高さ180メートル)、地下2階、重箱を重ねたようなモダンなデザインが特徴的な新しい建物の総称は、「東京ガーデンテラス紀尾井町」。赤プリとはコンセプトをガラリと変え、ホテル「ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町(7月27日オープン)」が占めるのは30~36階と高層フロアのみ。総客室数250室は、都内のプリンスホテルでは最少規模だという。
その他、レストランやコンビニなどの商業施設、会社の会議やセミナーなどで利用できるカンファレンス、5~28階はヤフーやメットライフ生命保険などが入居するオフィスフロアとなっている。また、別棟には地上21階で総戸数135戸の賃貸マンション(紀尾井レジデンス)が聳える。つまり、赤プリは多目的な「複合施設」に生まれ変わったというわけだ。
「オフィス、ホテル、住宅、商業などの再開発をとおして、西武グループの持つ保有資産のポテンシャルを最大限に引き出し、将来のモデルケースとなる施設にしたい」
5月9日、報道関係者向けに開かれた先行オープン内覧会で、こう意気込みを語った西武プロパティーズ取締役の齊藤朝秀氏。
2019年春のリニューアルを目指すホテルオークラ新本館も、オフィス需要などさまざまなニーズに対応した施設になるというが、なぜいま、老舗ホテルは続々と複合化するのか。
「景気や天候に左右されるホテル事業より、長期契約が結べるオフィスや住宅、飲食店などを混在させたほうが安定した不動産収益が見込める。また、2020年のオリンピックを前に、東京に本社機能を移したい有名企業や、高級ホテルに泊まりたい外国人旅行者やビジネス客などを呼び込むことで、都心のランドマーク的な付加価値もつけられる」(大手デベロッパー)
新赤プリとなるザ・プリンスギャラリー紀尾井町も、客室数を減らしたとはいえ、まさにインバウンド需要を意識した最上級ホテルそのものだ。客室料金は、下は6万円から上はなんと59万円を予定している。西武によると、外国人客比率は2017年度に60%、2018年度は70%を見込んでいる。