しかしながら、話している本人は「アレ」が短期記憶を指しているのかエピソード記憶なのかの区別を自覚しているわけではないし、聞かされる側も判別しようがない。医学的にも「MRIなどで診断しない限り、言動から物忘れと認知症を見分けることは難しい」(同前)という。だからこそ、「アレ」は困りものなのだ。

 では、認知症のサインとなる「アレだよ、アレ」を防ぐ方法はあるのだろうか。前出・眞鍋氏が語る。

「短期記憶であれエピソード記憶であれ、記憶の欠落を防ぐためには、脳に適度の負担をかけ続けることが有効です。それによって脳細胞が刺激され活性化するからです」

 棋士の羽生善治・名人(王位・王座・棋聖)との共著『「ほら、あれだよ、あれ」がなくなる本』(徳間書店)がベストセラーとなっている脳科学者の茂木健一郎氏もこう指摘する。

「ちょっとしたことをスマホなどで検索などせずに、日頃から思い出すようにする。そうすることで、(脳の中で記憶を司る)前頭葉から記憶を引き出す回路を鍛えられます」

 それ以外にも、「アレだよ、アレ」を減らす方法がある。「アレ」を単体で覚えるのではなく、固有名詞と紐付けして覚えるやり方だ。それが上手くできれば、歳を重ねても記憶力は低下しにくくなる。

※週刊ポスト2016年5月20日号

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