今年3月21日に10周年を迎えたツイッター。もともとは「社会的要素を備えたコミュニケーションネットワーク」を目指して米・ツイッター社が始めたサービスだ。140字以内で、誰もが自分の感情を表現できるとして、ソーシャル・ネットワークの概念が根づいていなかった日本にあっても、IT関連の人や流行りものが好きな人たちを中心に、支持を集めていった。
ガジェットライターの太田百合子さんが振り返る。
「日本では1990年代にホームページブームがきて、その後、ブログブームへ発展。ですがブログを毎日書くのがツライという脱落者たちも出てきて、ブログより手軽に始められる『140文字だけのミニブログ』として注目されました」
当時のツイッターのスローガンは“いま、何してる?”で、自分の状況を知らせる“○○なう”という投稿が多かったのもそのせい。それが2009年11月頃に、スローガンが“いま、どうしてる?”に変更され、自分以外の誰かも含めての言動についての投稿が増えていった。
急速に日本に普及していったソーシャル・ネットワーキング・サービス(以下SNS)と比較してみると、実名で登録するFacebookや、ニックネーム登録は可能なものの招待制のmixiは、実際の交友関係を中心とした“クローズ”なSNSといえる。一方ツイッターは誰でもすぐ始められ、世界中に公開している“オープン”な特性を持っている。
「匿名で利用する人が多く、利用するために必要なアカウント(ID)を、1人でいくつも持てる自由さがあります。以前から日本では2ちゃんねるなど匿名で意見を交わせる掲示板が人気でしたが、あまり個を表に出したくない日本人のメンタリティー的にも手軽に利用しやすいのでしょう。それにもともと日本人は、俳句や短歌、ことわざなど、短い言葉に多くの情報を詰め込むのが上手ですから、その点もマッチしたのだと思います」(太田さん)
今や巨大な社会インフラへと成長したツイッターだが、日本で一般化したのはわずか5~6年ほど前だと言うのは、ネットニュース編集者の中川淳一郎さん。
「2008年に日本語版ツイッターが公開され、2009年春に勝間和代さん、同年夏に堀江貴文さん、同年末にソフトバンクの孫社長が始めたあたりから、徐々にすそ野が広がりました。私も2009年に登録しています。当時はFacebookのように実名でやっている人も多かったですし、“○○で飲んでるなう”とつぶやくと、実際に友人が集まって『おぉ~ツイッターすげぇ~! 本当に来た』みたいに、牧歌的な雰囲気が流れていた」
そんな空気が変わってきたのは、瑛太や上野樹里が主演したドラマ『素直になれなくて』(2010年・フジテレビ系)あたりだと中川さんは言う。同年初頭には週刊ダイヤモンドがツイッターの大特集をし、マスメディアの注目も高まりつつあった。