ビジネスマンの必読紙・日経新聞の競馬予想が「当たる」と話題になっている。実際、5月1日に東京競馬場で開催された12レース中、実に11レースで日経が「本命(◎)」もしくは「対抗(○)」とした馬が1着でターフを駆け抜けた。8日開催の12レースも8レースを的中。各日のメインレースとなった1日の天皇賞と8日のNHKマイルカップ(いずれもGI)でも、日経はいずれも勝ち馬に「○」の印を付けていた。
実は日経には全国紙で唯一、競馬の「専門記者」がいて取材と予想に励んでいる。高給で知られる日経だけに業界では、「日本一給料の高い競馬記者」とも呼ばれる。中でも有名なのが、異色の経歴を持つ競馬記者・野元賢一氏である。
◆著書で異例の「業界批判」
1964年生まれの野元氏は東大法学部を卒業後、毎日新聞社に入社し、長野支局を経て運動部に配属された。
「彼は大学時代から大の競馬好き。毎日新聞でも競馬を担当していたが、どうしても専門になりたくて中途採用で日経に転職したそうです。現在は日経本紙だけでなく、競馬専門誌のコラムやテレビ、ラジオの競馬番組でも活躍しています」(競馬紙記者)
野元氏の名を一躍世に広めたのが、2012年、約30億円の払戻金を得た会社員が外れ馬券の購入費を「必要経費」として認めてもらえず、6億9000万円もの所得税を課せられたことに端を発した「馬券課税裁判」だ(※注)。野元氏は紙面でこの会社員を徹底擁護して名を馳せた。
【※注:追加徴税を不服とした男性が提訴し、最高裁まで争われた結果、「馬券は経費」とする判決が下された】
彼に話を聞こうと取材を依頼したが、広報を通じ「紙面に書いていることがすべてです。今回は辞退させて頂きます」との回答で、残念ながら“出走拒否”だった。
しかし、野元氏の競馬に対する並々ならぬ思いは、著書『競馬よ! 夢とロマンを取り戻せ』(日本経済新聞社刊)に記されている。彼はこの本で、競馬記者としては異例の業界批判を展開していた。
〈公営競技は(中略)護送船団体質が今も温存されながら、JRAを含めて苦境にある。身を切るような改革を早急に実現しなければ、多くの娯楽産業の中で埋没していくのは避けられまい〉