「日本のスクリーニング(※注)は質が高いので、スクリーニング効果の可能性が高い。しかし、二巡目検査でがんが見つかっていることは少し気になる。この後も、さらにがんが増えるようなことがあれば、スクリーニング効果だけでは説明がつかない」
【※注:健康な人も含めた集団のなかから、特定の疾患を発見する検査。精度の高い検査を行なうことで発見の頻度が高くなる「スクリーニング効果」が懸念されている】
そして、こう続けるジェミチェク医師。
「日本でも長期的な展望で検診を行なうことが大事だ。そうすれば、子どもたちの命は必ず守れる」
彼はパソコンのデータをぼくに見せながら、「子どもの甲状腺がんはリンパ腺転移が多いのが特徴だが、きちんと手術をすればほぼ治る。スクリーニングで本来、見つけなくてもよいがんを見つけただけだから、放っておいてよいというわけではない。やはり、きちんと治療すべきだ。そうすれば、おじいちゃん、おばあちゃんになるまで生きられるだろう」と、少し笑みを浮かべた。
●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。近著に、『「イスラム国」よ』『死を受けとめる練習』。
※週刊ポスト2016年5月27日号