心臓の上部にある心房部分が、1分間に350回以上もさざ波のように不規則に動くのが心房細動(しんぼうさいどう)だ。自覚症状がないことも多いが、不整脈や動悸、息切れ、倦怠感などの症状が起こることもある。
また、心房内の血液の流れに淀みが生じることで血栓ができ、脳に血栓が飛んで重症の脳梗塞を起こし、半身まひや死に至ることもある。心房細動は過労やストレス、睡眠不足、飲酒・喫煙、加齢、脱水などが誘因で発症すると考えられている。
葉山ハートセンター(神奈川県三浦郡葉山町)の副院長で不整脈センター長の佐竹修太郎医師に話を聞いた。
「心房細動の発生源の多くは、心房と肺とのつなぎ目の4本の肺静脈の根元付近であることがわかってきました。遺伝的に接合部が弱い人が、長年の過労やストレスなどを受けると根元が膨れ、心房細動が起こります」
心房細動による不整脈では、まず薬物治療を行なう。薬剤が効かなくなったり、投与期間が長くなると電極カテーテルによる高周波焼灼術が行なわれる。大腿動脈から先端に電極が付いたカテーテルを挿入し、発生源に高周波を流して部分的に焼灼し、固める治療だ。これは肺静脈口周囲の心房筋を少しずつ焼灼するので、治療に長時間かかる。
また、直接組織に通電するので、70℃以上になり、線維組織の融解(ゆうかい)や近くを通る食道壁に孔(あな)があき、食道穿孔(せんこう)など重篤な合併症も5%程度起こる。
この4月、佐竹医師が開発した高周波ホットバルーン治療が保険収載された。カテーテルを心房中隔に穿刺(せんし)して心房に挿入するところまでは従来と同じだ。