牝馬クラシック第2弾、桜花賞から距離が一挙に800メートル延び芝2400メートルで競われるGI「優駿牝馬(オークス)」。数々の名馬を世に送り出した調教師・角居勝彦氏による週刊ポストでの連載「競馬はもっともっと面白い 感性の法則」から、かつてオークスを制したシーザリオが、なぜ早すぎる引退をすることになったのかを解説する。
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角居厩舎では2005年にシーザリオ、2008年にもトールポピーが勝っています。特にシーザリオは厩舎に初めて牝馬GI勝利をもたらし、開業以来の目標だった海外遠征での勝利。まさに快挙でした。6戦5勝。あまりに短い付き合いでしたが、濃密な思い出があります。
鞍上は桜花賞を除いて福永祐一騎手。12月の新馬戦を勝ち、2戦目の寒竹賞が試金石でした。2着アドマイヤフジは皐月賞5着、ダービー4着、その後も金杯を連覇。4着ダンスインザモアもスプリングSを勝つなど、メンバーが揃っていた。そんな中、4番人気で勝ち切りました。新馬のマイル戦、寒竹賞の2000メートルと牡馬相手に快勝したことで、将来への手応えを得たことを鮮明に覚えています。
そしてフラワーC(圧倒的1番人気)を勝ち、3戦3勝で桜花賞へ向かいます。順調そのものに思えますが、実は“虚弱児”でした。デビューが遅れたのも体質が弱かったからです。
前脚の種子骨(つなぎの上の球節の骨)に隙間が多く、密度が高まらないまま馬体が成長してしまう。待っていても骨が強く固まらないので、ゲート試験を経てとにかく競馬をしてしまおうと判断しました。
脚元に不安があったものの、人間の指示をよく聴き、調教もしやすかった。当初は脚のさばきがダート馬っぽい感じでしたが、芝で使ってみると切れのよい走りでした。
桜花賞では、祐一君騎乗のラインクラフト(1着)にアタマ差で敗れたものの、直線で豪快な追い込みを見せました。おかげでオークスのような長い距離のほうがいいとの感触を得られ、その通りの快勝でした。
アメリカンオークスでも見事に期待に応えて凱旋帰国。ひと夏ゆっくり休ませようとしましたが、ここでウィークポイントが悲鳴を上げます。