国内

手取り15万円で土日出勤も ブラック化する保育園

 かつては「大きくなったら保母さんに」が、多くの少女たちの夢だった。しかし今や、保育士のなり手がいない。専門学校等で保育士の資格を取得している人が約119万人いるのに対し、実際に保育士として働いている人は約3分の1の43万人。残り76万人は、資格を持っているのに働いていない“潜在保育士”なのだ。それには理由がある。

『ブラック保育園のリアル』の著者・脇貴志さんは言う。

「給料が仕事に見合っていないことが人手不足を生んでいます」

 いかにも保育士さんというソフトなムードが漂う山本彩夏さん(仮名、26才)は都内の公立保育園で働いている。彼女の給与明細を見せてもらうと、基本給が約17万円、そこに残業代2万円を合わせた19万円が手取りになる。女性の平均月収25万9600円と比べるとやはり安い。しかも…。

「仕事は大変です。残業代に反映しないサービス残業が月に50時間にも及びます。特につらいのは、事務作業。30人の保育士がいるのにパソコンは5台しかなく、学年だよりや連絡網を作るときは、取り合いになるので朝早くに行くか夜遅くに園で作るしかないんです」

 平日は睡眠時間も満足に取れないというが、山本さんはまだ恵まれている方かもしれない。

 都内の私立保育園で働く鈴木大介さん(仮名、24才)は保育専門学校を卒業し、今年で5年目になった。給与は手取り15万円。平日は毎日出勤し、土曜日も月に2回“出”があり、日曜もイベントの手伝いなどでたまに出勤することがあるそうだ。これらの休日出勤に手当はつかない。時給に換算すると、約720円。東京都の最低賃金を割ってしまう有様だ。

「子供はかわいいし、大好きです。しかしこの給与ではひとり暮らしもできない。幸いに実家だから生活できますが、将来結婚して子供を持つなんてできるかどうか。夢のまた夢です…」

 経験を積めばやがて昇格する――それなら夢も持てるだろう。しかし、保育の世界は、昇給がほとんどないというのが常識。年齢が上がり立場が上がっても賃金は上がらない。

 今春、私立保育園の園長になった小林佳子さん(仮名、42才)は、役職手当5万円がついて、ようやく手取りが30万円に届いた。

「うちの園は24万円と基本給がいい方なのですが、ボーナスもないため、結局年収は低いんです。私も、園長になるまでの3年間は24万円に加えて1万円の主任手当のみでした。だから保育士不足が慢性的に続いていて、他園といい保育士は取り合いです。そうした穴埋めをするのも園長の仕事で、みんなの不満をなだめたりするのも本当にしんどいです」

 ベテランでスキルの高い保育士ほど「自分と同じくらい給料をもらっているくせに」と若い子に対して厳しく、それが離職をさらに加速させ人手不足の連鎖を生んでいるという。そもそも保育士の給料はどのように決まるのか。

関連キーワード

関連記事

トピックス

歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン