仕事帰りに立ち寄り、お酒を一杯と少しのつまみで短時間で楽しむ「ちょい飲み」が広がっている。駅前の小さな立ち飲み屋で見られたこの業態が、今では全国チェーンの飲食店、ファストフード店でも提供されるようになった。話題の「ちょい飲み」の可能性について、経営コンサルタントの大前研一氏が解説する。
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コーヒーチェーン店やファストフード店の「ちょい飲み」が話題になっている。「スターバックス」や「ケンタッキーフライドチキン」などが“仕事帰りに軽く1杯”の新業態を展開しているのだ。
今年3月、東京・丸の内に日本1号店がオープンした「スターバックス・イブニングス」は、グラスワインが850~1200円、グラスシャンパン1400円、ビール800~850円、ラタトゥイユ650円、タルトレット380円(いずれも税抜き価格)という強気の価格設定だ。
「ケンタッキーフライドチキン」は高田馬場店が4月にリニューアルして昼はカフェ、夜はバルとなり、生ビールとクラフトビールが550~750円、オリジナルのハイボールが460円で、ワインやカクテル、サワーもある。
つまみは、ぷりっと鶏もも肉の燻製が480円、生ハムとデンマーク産カマンベールの盛り合わせが580円、ソーセージ&角切りベーコンのジューシーグリルやチキン・コルドン・ブルーラタトゥイユ添えが680円(いずれも税込み価格)など、フライドチキン以外も充実している。
「ちょい飲み」は、もともと中華食堂「日高屋」や牛丼「吉野家」の「吉呑み」をはじめ、立ち食いそば「富士そば」の「ふじ酒場」、長崎ちゃんぽん「リンガーハット」の「ちゃんぽん酒場」、コンビニ「ミニストップ」の「cisca」、ハンバーガーチェーン「モスバーガー」の「MOSCLASSIC」などが続々と登場した。それが人気を集めているため、他の外食チェーンも追随しているのだ。
これまでサラリーマンが仕事帰りに同僚や友達と飲みに繰り出す店といえば、居酒屋、焼き鳥屋、おでん屋などの赤ちょうちんが定番だった。しかし、思うように給料が上がらず(したがって小遣いも上がらず)消費を抑えざるを得ないため、少しでもリーズナブルに飲みたいという切実なニーズに「ちょい飲み」がマッチしたのである。現代サラリーマンの悲哀を如実に物語る現象と言えるだろう。
そういう状況の中で、中高年おやじだらけの赤ちょうちんとは異なり、若い女性も抵抗なく立ち寄れるスタバやケンタで軽く1杯、というトレンドはアフターファイブの“真空地帯”を開拓するもので、いいところに目をつけたと思う。