芸能

左とん平 「存在感ある役者になりたいよ」

役者として長いキャリアを持つ左とん平

 役者として長いキャリアを持つ左とん平は、これまで多くの役者たちと共演してきた。左が語った中村吉右衛門、朝丘雪路、天知茂、山村聰と共演した当時の思い出について語った言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』からお届けする。

 * * *
 左とん平は1969年、中村吉右衛門主演のテレビ時代劇『右門捕物帖』(日本テレビ)にレギュラー出演している。その後、1990年には同じく吉右衛門主演の『鬼平犯科帳』(フジテレビ)にゲスト出演した。

「『右門』の時はお互いに青かった。『まだまだ芝居が若いな』と思いながらやってたこともあったくらい。

 それが『鬼平』の時は全く違っていた。上手いなと思ったね。年齢を重ねた味が芝居に出ていたんだよ。いろいろと苦労してきたんだろうと伝わってきた。

 時代劇の所作は、僕の場合は一緒に共演してきた人のを見ていて『ああ、そうか。こういう時はこうするのか』というのを見ながら覚えていったんだよね。そういうの、パッと分かるんだ。

 三越劇場で朝丘雪路さんと一緒に出た時、洋食の職人の役をやることになって。舞台の上でオムレツを作る芝居をしたんだけど、朝丘さんが『本物が作っているように見えた』と言うんだ。一度も作ったことないのに。

 実は一度、洋食屋の厨房を見に行っていてね。その時に、『フライパンを持って手をカクンカクンさせる、この動きが見せどころだな』ってすぐに分かった。

 若い頃、親父が寿司屋をやっていて、僕は高校生で出前をやっていたんですよ。その時に板前さんの動きをよく見ていた。そういうのも経験になっているんだと思う。出前先では口先でのごまかし方も覚えたしね」

 1973年には天知茂主演の刑事ドラマシリーズ『非情のライセンス』にレギュラー出演した。

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