真っ赤なミリタリー調のスーツに、シャネルのブローチをつけた姿はまるで昔のGS(グループサウンズ)のステージ衣装のよう? しかし櫻社長は「GSって、何ですか?」と首をかしげる。聞けば、両親とも医師で、「母親は58才」。オバと同世代だ。つい母親目線になり、「それでご両親は何て言っているの? 来店したことがあるの?」と聞いた。
ホストクラブで親の話題はタブー、というほどではないが、みんな事情があるんだから、本当の話をしなくてもいいという客と店側の暗黙のルールがある気がする。
ところがどうだろう。櫻社長は、白い歯をきらりきらりと見せつけながら、「姉と母親は店に来ていますよ。あ、ちょっと待って」。携帯の中から家族写真を出して、オバに差し出すではないか。
「父親もファッションが大好きで、ぼくも子供の頃からブランド服を着せられていましたね。だいたいホストのファッションてダサいじゃないですか。だからそれを変えたかったんです。ま、ぼくもファイナルファンタジーみたいな王子様スタイルをしていたこともあるから、あんまり言えないんだけど(苦笑)」
と言いつつ、携帯から、かつて24か月、連続ナンバー1だった頃の写真も見せてくれた。
「そもそも親に言えない仕事っておかしいでしょ。店のメンバーにもホストをしてるって親に言っていない子がいたので、ちゃんと話して来いと、実家に帰らせました。彼の親は“お前、変わったね”と、応援してくれたそうです」
洋服は奇抜だけど、キチンとした家庭で育ったからか、考え方がすごくまっとう。
櫻社長はお酒が飲めない体質で、何で勝負をするか考えた結果、まっとうさを磨くことが自身のブランド力を高めると行きついたという。それゆえ、No.1になってから接客のイロハを学び直し、ショータイムのダンスのためにダンスレッスンに通う。メンバーのファッションやメイクのチェックも毎日行う徹底ぶりだ。
そうこうしている間に、栃木県出身でナンバー2の晴琉くん(21才)、赤い帽子もかわいい一織くん(22才)、九州男児のZEROくん(23才)が集まってきた。
まあ、彼らのきれいなこと。老眼の目が洗われるよう。アイドルにも韓流にも心が動いたことがないオバが、なんだか、うれしくて楽しくて仕方がない。これって、年のせい?
「初体験ですか? ぼくは遅いですよ。高校時代もまったくモテなくて、フラれっぱなしでしたから」
晴琉くんは、つぶらな瞳でオバをひたっと見つめる。彼らのどこをほじっても、水商売特有の秘密も、暗さも、苦労話もない。ホスト特有の、今日会った人に「運命の人」とほざく“チンピラ性”もない。
こんなんで生き馬の目を抜く歌舞伎町で、ちゃんと生きていけるのか。あれからオバの老婆心はうずきっぱなしだ。
※女性セブン2016年6月2日号