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毛沢東を描き続ける老画家「恥ずかしいと思ったことはない」

2013年に催された毛沢東生誕120周年イベント Imaginechina/AFLO

 中国建国の指導者であり、40年前に世を去った毛沢東の存在感が中国国内で不可解なほど強まっている。今日の最高指導者・習近平は、ことのほか毛沢東に対する尊敬や模倣を口にするようになっており、大衆の毛沢東への思慕と共鳴している。

 こうした動きに欧米のメディアも最近、警鐘を盛んに鳴らし始めたという。ジャーナリストの野嶋剛氏がレポートする。

 * * *
 4月5日発売号の米誌タイム(アジア版)は習近平の顔がはがれて毛沢東が現れるインパクトのある表紙を掲載した。4月上旬に刊行された英エコノミスト誌も「毛沢東以来、最大の権力を握った指導者となった」と指摘している。

 文革への反省もあって中国は制度上、個人崇拝を固く禁じている。習近平が毛沢東ばりの個人崇拝まで向かう可能性は高くないだろう。しかし、毛沢東の力を借りて、自分を守ろうとしていることは間違いない。

 習近平の発動した反腐敗キャンペーンは薄熙来や周永康などほとんどすべての大物を打ち倒して一段落したかに見えるが、一方で、習近平は多くの人間から骨髄の恨みを買った。暗殺未遂の噂も絶えない。

 中国メディアのベテラン記者は「反腐敗と毛沢東の復活はセット。毛沢東が1950年代に反腐敗闘争で使った『大虎狩り』という言葉をいま習近平が使っている意味は、毛沢東の威を借りて、政敵を威圧するためだ」と解説する。

 拝金主義によって空洞化した共産主義という「理想」の代替としても毛沢東主義が有用になっている面もある。巨大な中国では国家統合のために、民衆を高揚させる何らかの「理想」が統治には否応なく求められる。

 1990年代の中国は、日本たたきにその役割を担わせた。習近平が掲げる「中国の夢」「中華民族の復興」はスローガンとしては実体がないので、その穴埋めとして、毛沢東を持ち出してきていることは否めない。

 習近平などの「紅二代」(※注)と呼ばれる革命後の世代は、文革に夢中になり、毛沢東の名前を借りて親や友人を苛め抜いた経験を持っており、本音では「文革はやりたい放題で、楽しかった」と思っている人も少なくない。中国全体で「文革の記憶」が薄まっているのだ。

【※注/日中戦争や国民党との内戦に貢献した革命世代の子女を指す。現在の最高指導部では、習近平や、その“右腕”王岐山などが該当する】

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