長年、日本人の死因の上位を占めてきた心筋梗塞と脳梗塞。厚労省人口動態調査(2014年)によれば、脳梗塞による死者は6万6000人、心筋梗塞は3万9000人。その国民病の「原因」を叩く方法に注目が集まっている。
5月11日放送『ガッテン!』(NHK)では「血液のチカラ向上作戦! 脳梗塞・心筋梗塞で死なないために」と銘打って、その原因となる「血栓」をいかに溶かすかについて特集し、大きな反響を呼んだ。笛吹中央総合病院院長で日本血栓止血学会理事長の尾崎由基男氏が解説する。
「脳梗塞や心筋梗塞は、血栓症を原因とするものが9割を占めるといわれる。血栓は血液凝固に関わるフィブリノゲンとよばれるたんぱく質と血小板が中心となってできるもので、本来は傷口からの出血を防ぐ大事な役割を果たすもの。生体内では血流が保たれるよう、血栓を作る機構と血栓を溶かす機構がバランスをとっているが、加齢や動脈硬化によってこのバランスが崩れ、不必要な場所に血が固まり血流が遮断されるのが血栓症です。
高脂血症、高血圧、糖尿病などで血栓症は起きやすくなる。もちろん喫煙や脱水も重大な危険因子。そのほか恐怖やストレスを感じると血栓が出来やすくなることがわかっています。例えばゴルフ中に心筋梗塞を発症するケースではグリーン上で起きることが多い。パッティングで緊張し、強いストレスを感じるからだと考えられる」
この血栓が血中を流れ、脳や心臓の血管に詰まることで起こるのが脳梗塞や心筋梗塞である。ということは、原因となる血栓を溶かしてしまえばよい。
すでに脳梗塞治療では特効薬が開発されており、後遺症がまったくない、あるいは日常生活に支障ないレベルまで回復する人たちが増えている。それをもたらしたのが血栓を溶解する特効薬「t-PA」である。
「体内には血栓を溶かす作用のあるプラスミンという酵素がある。プラスミンは前駆体のプラスミノゲンから作られ、t-PAはプラスミノゲンをプラスミンにすることにより血栓を強力に溶かす作用を示します。
現在、脳梗塞治療に使われているt-PAはアルテプラーゼ製剤というタイプで、米国、欧州諸国など世界40か国以上で承認され、わが国でも2005年10月に厚労省の承認が下りています」(前出・尾崎氏)