人気が高まれば高まるほどに、様々な意見が表出するものである。限られた人だけが気づく問題もある。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が大人気の朝ドラについて指摘する。
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「『べっぴんさん』 関西弁を楽しくけいこ」という記事が目に入った。10月から放送されるNHK連続テレビ小説『べっぴんさん』の収録が、神戸の異人館でスタートしたとか。
そう、各地方独特の美しい響きをもった言葉遣いは、朝ドラの魅力の一つ。前作『あさが来た』も出演者が大阪弁を必死に習得した努力が、ドラマの中で大きな輝きを放ち、魅力となっていた。
「役者さんには大阪弁独特の『音』が狂わないように、常に大阪ことばの『音』、言葉のアクセントを意識していただいています」(方言指導をした松寺千恵美さんのコメント。NHK大阪放送局ブログサイト)
それに対して、東京の下町・深川を舞台に放送中の『とと姉ちゃん』の言葉、どうなのだろう? 親子3代東京生まれ・江戸っ子の私の耳には、どうにも違和感ありありに響くのだけれど。いや、私だけではなさそう。
「ピエール瀧が演じる料理人の『べらんめえ風口調』があまりにもひどくって、聞いちゃいられねぇ」という嘆きが耳に入った。
東京・神田生まれのおじさんは言う。
「とにかくあのセリフ回し、ダラダラ間延びしてて気持ち悪いったらないな。深川という場所で働く職人を描くんだとすりゃ、もうちょい言葉を練習しなくっちゃね」
●東京弁、江戸っ子像がなってない
よく言われるように、江戸っ子言葉の特徴はさっぱりしていて、歯切れいい。その性格は、細かいことにこだわらない。意地っ張りだが根は優しくて照れ屋。人前で格好つける。いわゆる「いき・粋がり」だ。
ピエール瀧は必死に、江戸っ子の職人を真似ているつもりかもしれない。しかし、語尾が「だあ~」「でえ~」と長く伸びてしまってキレ味がなく、一本調子の大声でがなるばかり。とても、東京下町の商人や職人の言葉には聞こえない。
人が多くて忙しい町に住む人は、気が急く。母音が続く場合は発音を短縮する口調になる。サラッ、キパっとしたテンポがないと暮らしていけない。静岡出身のピエール瀧が生粋の東京弁をしゃべれないのは当然だろう。だとすれば、前作『あさが来た』や秋に始まる『べっぴんさん』のように、独特な言葉=東京弁にどっぷりと浸って練習するとか、方法はいろいろとあるはず。