年明けから幾度となく7月の衆参同日選挙が取りざたされてきたが、強い意欲を持ち続けてきたのは安倍晋三・首相その人である。
国民の選挙で選ばれた衆院議員475人全員を一存でクビにする解散権は総理大臣の権力の源泉といっていい。474人の議員が束になっても、総理1人が決断すれば止められない。
「総理たるもの、いつ何時も常に解散が念頭にある」
30年前に衆参同日選を行なった中曽根康弘・元首相がかつて本誌に語った言葉だ。総理大臣は勝利のチャンスがあれば解散の誘惑に駆られ、現に安倍首相は前回(2014年12月)、与野党の誰も予想しなかったタイミングで解散を打って勝利し、政権の求心力を高めた。
今回は表向き「解散のかの字も考えていない」といいながら、昨年末から同日選を想定して国会日程を組み、選挙準備を進めてきたことは政界では周知の事実だ。
その決意を止めるために、首相のもとに選対から重要な資料が提出された。自民党はゴールデンウイーク後に官邸の指示で衆参同日選を行なった場合の衆院295小選挙区(前回から定数5減)と参院選選挙区の情勢について内々に世論調査(5月14~15日)を実施した。その調査の生数字と情勢分析結果だった。
例えば今回から定数1増(改選3議席)となり、自民党と民進党が候補者を2人ずつ擁立する参院北海道選挙区の場合、1位は自民の長谷川岳氏が約25%、2位は民進の鉢呂吉雄氏が約18%、当選圏内の3位には民進の徳永えり氏が約14%で滑り込んでおり、自民新人の柿木克弘氏は共産党の森つねと氏と横一線の約11%で4位争いをしている──という数字だと党内に伝わっている。
勝敗の分け目となる32県の参院1人区は、共産党が候補者を取り下げて民進、共産、社民、生活の野党4党が候補者を一本化し、選挙協力態勢を組んだことから激戦となっている。岩手、宮城、秋田、山形、福島、新潟、長野、山梨、滋賀、三重、奈良、岡山、大分、沖縄の14選挙区が大接戦。
「最大10選挙区で落とす可能性があると分析されている」(自民党幹部)
とくに沖縄では島尻安伊子・沖縄担当相が大きくリードされ、福島でも岩城光英・法相が苦戦しており、参院議員の現職閣僚2人が落選の危機だ。