安倍晋三・首相は、伊勢志摩サミットで来日したオバマ米大統領と固い握手を交わした。「強固で対等な日米同盟」が世界にアピールされたが、日米関係の実像は戦後70年以上が経ってなお、「占領軍とその属国」ではないのか──米国との“不平等条約”をひもとくと、そんな現実を突きつけられる。
1960年の日米安保条約締結と同時に交わされた現在の日米地位協定(前身は1952年の日米行政協定)について、在日米軍基地問題に詳しい沖縄国際大学教授の前泊博盛氏が解説する。
「在日米軍の地位と権利を定めたのが地位協定です。米軍人・軍属の公務中の事件や事故については日本の法律は適用されず、米軍法の裁判権が適用されるという“不平等条約”の側面がある。米兵たちを守るための約定ともいえます」
今回の事件は「公務外」とされ沖縄県警が身柄を確保できたが、協定の矛盾がクローズアップされたのが1995年に沖縄で起きた米海兵隊員らによる少女集団暴行事件だった。協定に基づき、米側は起訴前の容疑者の身柄引き渡しに応じなかった。
その対応への県民の猛烈な反発を受け、殺人や性的暴行などの凶悪犯の場合は米国政府が「好意的配慮を払う」と一部運用の見直しが行なわれた。
しかし、元外務省国際情報局長でベストセラー『戦後史の正体』著者の孫崎享氏は「この“好意的配慮”を払うかは米国の胸三寸で、米軍が『配慮した』といったら、日本側は受け入れざるを得ない不十分なもの」と説明する。そして、日米地位協定におけるこうした排他的な権限を最も強く意識させる条文が「3条1項」である。
その条文にはこうある。
〈合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置を執ることができる〉
「施設及び区域」とは米軍基地を指す。沖縄県をはじめとして日本全国には広大な米軍基地があるが、その敷地内には日本の行政権や警察権が及ばないことを示している。いわば“治外法権”を認めているのだ。
「基地内は米国に管理権があり、日本の行政当局にとってもアンタッチャブルな空間です」(前出・前泊氏)