芸能

左とん平 段階を踏まないと喜劇に深みがないんだよな

左とん平が抱く「喜劇」へのプライド

 喜劇出身で、幅広く活躍する俳優・左とん平は、若い頃から多くの喜劇人たちと共演し、影響を受けてきた。左が喜劇人仲間や大先輩たちとの共演の思い出を語った言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』からお届けする。

 * * *
 左とん平は1970年、久世光彦演出・森光子主演のテレビドラマ『時間ですよ』(TBS)にレギュラー出演している。

「あの時は森さんに絡むチンピラの役で出番も少ないから、インパクトを強くしようとした。そうしないと次がないからね。

 久世さんと出会うキッカケは麻雀。有島一郎さんのマネージャーが久世さんと仲が良くて、麻雀に誘われたんだ。だから、芝居どうのというよりは、久世さんとしては『こいつを使えば麻雀のメンバーに困らない』というのがあったんじゃないかな。

 久世さんの演出は見ていて格好よかった。仕草が役者みたいでね。演出は、まずこっちに演じさせる。そうすると『とんちゃん、もっと違うのがあるだろ』と言ってきて『じゃあ、こういうのはどうですか』とやると、『じゃあそっちで』というスタイルでピックアップしていく。あの当時は堺正章に樹木希林に由利徹さんに伴淳三郎さん……芸達者が揃っていたから、そういう演出ができたんだと思う」

 その後、久世作品には1974年『寺内貫太郎一家』、1977年『ムー』と立て続けに出演している。『寺内~』では石工職人役として、喜劇界の大先輩・伴淳三郎と名物コンビを形成している。

「伴さんが熟練の職人で、僕が若造の役。それなのに、こっちが雑に扱うんだよね。殴ったりして。言うことをよく聞く役は面白くないし、久世さんもそれを求めてなかった。あの人もアウトロー的なのが好きなのよ。

 伴さんはほとんど台本が読めない。目が悪いから。読む時は顔をくっつけるくらいホンに近づけて読む。だから、全部を見られないんで、自分のところしか見てないんだ。

 で、僕と由利さんで『あそこはこうですよ』って言うわけ。二人とも『大丈夫かな』という顔で見ているんだけど、本番になるとダアーッと物凄い勢いで芝居してくる。だから、こっちが食われて伴さんしかよく映らないんだ。由利さんと二人で『冗談じゃねえぞ、あのクソジジイ!』ってよく怒ってました。

 由利さんはシリアスな芝居をやらせても上手い役者なのに、照れるんだ。だから、あまりやりたがらない。泣かせるような場面でも『ここで泣かせればいいのにな』と思うようなところでサラっと行っちゃう。あるいは、何か笑える芝居を入れたり。『何でも入れればいいっていうわけではないですよ』と思うこともあったよ。顔立ちで損していたと思う。画面に映るとうっとうしくなっちゃうんだよね」

関連記事

トピックス

佳子さまと愛子さま(時事通信フォト)
「投稿範囲については検討中です」愛子さま、佳子さま人気でフォロワー急拡大“宮内庁のSNS展開”の今後 インスタに続きYouTubeチャンネルも開設、広報予算は10倍増
NEWSポストセブン
「岡田ゆい」の名義で活動していた女性
《成人向け動画配信で7800万円脱税》40歳女性被告は「夫と離婚してホテル暮らし」…それでも配信業をやめられない理由「事件後も月収600万円」
NEWSポストセブン
大型特番に次々と出演する明石家さんま
《大型特番の切り札で連続出演》明石家さんまの現在地 日テレ“春のキーマン”に指名、今年70歳でもオファー続く理由
NEWSポストセブン
NewJeans「活動休止」の背景とは(時事通信フォト)
NewJeansはなぜ「活動休止」に追い込まれたのか? 弁護士が語る韓国芸能事務所の「解除できない契約」と日韓での違い
週刊ポスト
昨年10月の近畿大会1回戦で滋賀学園に敗れ、6年ぶりに選抜出場を逃した大阪桐蔭ナイン(産経新聞社)
大阪桐蔭「一強」時代についに“翳り”が? 激戦区でライバルの大阪学院・辻盛監督、履正社の岡田元監督の評価「正直、怖さはないです」「これまで頭を越えていた打球が捕られたりも」
NEWSポストセブン
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん(Instagramより)
《美女インフルエンサーが血まみれで発見》家族が「“性奴隷”にされた」可能性を危惧するドバイ“人身売買パーティー”とは「女性の口に排泄」「約750万円の高額報酬」
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン
悠仁さまの通学手段はどうなるのか(時事通信フォト)
《悠仁さまが筑波大学に入学》宮内庁が購入予定の新公用車について「悠仁親王殿下の御用に供するためのものではありません」と全否定する事情
週刊ポスト
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”の女子プロ2人が並んで映ったポスターで関係者ザワザワ…「気が気じゃない」事態に
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・Instagramより 写真は当該の店舗ではありません)
味噌汁混入のネズミは「加熱されていない」とすき家が発表 カタラーゼ検査で調査 「ネズミは熱に敏感」とも説明
NEWSポストセブン
船体の色と合わせて、ブルーのスーツで進水式に臨まれた(2025年3月、神奈川県横浜市 写真/JMPA)
愛子さま 海外のプリンセスたちからオファー殺到のなか、日本赤十字社で「渾身の初仕事」が完了 担当する情報誌が発行される
女性セブン
昨年不倫問題が報じられた柏原明日架(時事通信フォト)
【トリプルボギー不倫だけじゃない】不倫騒動相次ぐ女子ゴルフ 接点は「プロアマ」、ランキング下位選手にとってはスポンサーに自分を売り込む貴重な機会の側面も
週刊ポスト