ダービーが終わり、今秋からは2歳新馬戦が始まる。数々の名馬を世に送り出した調教師・角居勝彦氏による週刊ポストでの連載「競馬はもっともっと面白い 感性の法則」から、重要なマイルレースの意味合いについて解説する。
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角居厩舎は2008年、2009年とウオッカで連覇を果たしています。ウオッカは日本ダービーとジャパンカップも勝っており、血統的にもけっしてマイラーとはいえませんが、GI7勝という抜けた実績を持つ馬を、この時期に安田記念を使ったということは、そのままこのレースの近年の傾向を象徴しているといえます。
かつての安田記念は短距離馬限定のイメージが強く、「このメンバーなら、この馬が勝つ」といった予想が容易で堅い決着が多かった。前戦はマイラーズカップや京王杯SCで、秋はマイルチャンピオンシップを目標にすることが多く、変化に乏しく、面白みの少ないレースでした。
しかし今は違います。
3月下旬のドバイ組も走れるし、大阪杯から天皇賞(春)には向かわずにこちらを選んだり、2006年に創設されたヴィクトリアマイルから中2週で向かう馬もいる。レース後は宝塚記念まで使う馬もいるし、夏を越えて天皇賞(秋)にもつながっています。マイルという距離に縛られず、多彩なメンバーがここを目標にします。
マイルCSは天皇賞(秋)とジャパンカップの狭間でやや窮屈ですが、安田記念は古馬が走るマイル戦として目標にしやすい。
やはり、東京のマイル戦というところが大きい。東京の1600メートルは広くて直線が長く、道中できちんとタメを作ることができれば、最後は鋭く切れる。馬と騎手にとっては仕掛けどころが2000メートル、2400メートルとそれほど変わらない。東京ならではの特徴で、中距離馬でもここでスピードを試したくなります。