衆参同日選挙とその先の憲法改正を見据えた安倍晋三・首相の衆議院解散戦略は、菅義偉・官房長官によって封じ込まれた。
その攻防のさなかに起きたのが「麻生・谷垣の乱」だ。伊勢志摩サミットの翌5月28日夜、安倍首相は麻生太郎・副総理兼財務相を公邸に呼び、消費増税再延期への同意を求めた。麻生氏は真っ向から反論した。
「再延期するなら、解散・総選挙で信を問うのが筋」
予想外の態度に驚いた安倍首相は菅官房長官と谷垣禎一・幹事長を呼び込み、協議は4人に。谷垣氏も麻生氏に同調し、「増税再延期なら解散」を迫った。
安倍首相が出席した5月30日の自民党役員会で首相の“秘蔵っ子”とされる稲田朋美・政調会長まで「増税延期なら信を問うべき」と反乱に加わったのである。一致結束を誇っていた安倍お友だち内閣が音を立てて崩壊を始めた瞬間といっていい。
自民党内では、麻生氏と谷垣氏が権力闘争を仕掛けた真の相手は安倍首相ではなく、“影の総理”の菅氏だとの見方が強い。
増税派の2人はこれまで消費税問題で官邸に煮え湯を飲まされてきた。谷垣氏は昨年末の消費税軽減税率導入の際、菅氏に大恥をかかされた。公明党が対象品目を食品全体に広げるように主張したのに対し、谷垣氏は生鮮食料品に限定する方針を決め、「安倍総理も了承した」と説明した。それを菅氏にひっくり返されたからだ。
今になって消費税10%の引き上げを再延期するといわれれば、恥のかかされ損になってしまう。
麻生氏はサミット首脳会議直前に開かれた日米財務相会談(5月21日)で、米国のルー財務長官に「日本は消費税率を予定通り引き上げる」と増税を国際公約していた。にもかかわらず、安倍首相がサミット本番で増税延期に舵を切った。政治評論家の浅川博忠氏が語る。