毎日、放送されるニュース番組。どのニュースをどのように報じるかといった基本的な構成はどのように決まるのか。『ニュースJAPAN』(フジテレビ系)などでキャスター、解説委員を務めた元フジテレビの安倍宏行さんが解説する。
「朝、昼、晩に開かれる編集会議で、その時間までに起きているニュース、そのあと予定されているニュースを整理して共有します。その中から、何を番組で扱うかを決めるのは、各番組の責任者である編集長です。これはフジテレビの場合ですが、民放はみな、どこも同じような流れで決めているはずです」
どんなニュースがあるのかを編集会議で知らせるのは取材部の役目。取材部は社会部、政治部、経済部、外信部などからなり、東京キー局は、大体どこでも数十名近くの記者がいるという。
「民放の場合、インパクトのある映像の有無が番組作りを大きく左右します。それは新聞とは全く違う。火事の現場の映像が撮れれば、それが小規模な火事でも大きく扱うのはその顕著な例です。
最近では、舛添東京都知事の問題を連日、報道していますが、あれは“政治とカネ”という重要なテーマであるということだけではなく、彼が定例会見で疑惑についていろいろと話すから。映像があるから、テレビのニュースにしやすいのです」(民放のニュース番組ディレクター)
もちろん、インパクトのある映像がなくても、増税延期などの大きなニュースがあれば、それがトップで大きく扱われる。だから「ニュース番組はどの局も同じ」という印象を持ちがちだが、トップが番組によって異なることはあるし、2番目以降のトピックスについては、バラバラであることも珍しくない。
何をどの順で伝えるか、それを決めるのはプログラムディレクターと呼ばれる人の仕事だ。
「スタジオで原稿を読むのか、現場から生中継をするのか。そのニュースにコメンテーターが解説を加えるか。そういったことをすべて決めます。キャスターやコメンテーターの発言内容についても同様です。ですから、放送中にキャスターがどんなことを言うか、編集長やプログラムディレクターが全く知らないということは通常ありえません」(安倍さん)
このことについて、『NNNきょうの出来事』(日本テレビ系)元キャスターでジャーナリストの櫻井よしこさんはこう語る。
「ニュース番組は、1人で作るものではありません。私はキャスターという立場でしたが、ニュースは、記者が一生懸命かけずり回って情報を取ってくるから伝えられるのです。ですから、時には個人的な思いと違うこともありました。ニュース番組は私の意見番組ではなく、事実を前面に立てて、物事を伝えていこうと努力しました」
一方、キャスターが自ら方向性まで決めるアンカー制度を取る番組もある。毎日新聞特別編集委員の岸井成格さんはTBS系『NEWS23』のアンカーを務めていた。
「どんなニュースを取り上げるのかも含めて、私がリードしました。膳場(貴子)キャスター、スタッフと考え方、方向性が同じで幸いでした」