前出の報告書では、〈アフリカの金融資産の約30%がタックスヘイブンの口座に置かれ、毎年140億ドルの税収入が失われている。これは、年間400万人の子供を救う保健福祉政策や、アフリカの子供たちすべてが学校に通うために必要な教師を雇用できる規模に匹敵する〉と指摘されている。
もちろん、他人には計り知れない努力の末に手に入れた富を、どのように使おうが個人の自由だろう。一代で巨大な貴金属会社を築き上げた香港の林世栄氏のように金ピカ生活を送るのも自由だ。ある意味、豪華な車や贅沢な暮らしに資産を使うのは、世界経済を回しているだけ、まだマシなのかもしれない。
しかし歴史が物語るように、極端な富の偏在は人々の不満を爆発させ、たびたび社会の混乱を招いた。現代の超格差社会の行き着く先はどこなのだろうか。
※SAPIO2016年7月号