〈世界で最も裕福な62人が所有する資産が、世界の貧しい人々36億人の合計資産に匹敵する〉
2016年1月、貧困問題に取り組むイギリスの国際NGO「オックスファム・インターナショナル」が、そうしたリポートを発表した。
同NGOによる報告書『AN ECONOMY FOR THE 1%』(最も豊かな1%のための経済)によれば、この5年間で上位62人の資産は45%増加して1兆7600億ドル(約190兆円)に達する一方、貧しいほうの36億人の富は1兆ドル減り、上位62人と同額になったという。
1年前のリポートでは、〈世界の上位80人の資産が、貧しい人々35億人の資産と匹敵する〉とされていたから、格差は年々拡大していることがわかる。NGO・オックスファムのメディアユニット(広報部門)担当者がこう語る。
「昨年9月に国連で採択された『持続可能な開発目標』の中でも世界の格差問題に取り組むことが合意されましたが、我々の予想をはるかに上回る勢いで富裕層と貧困層の格差は広がっています。タックスヘイブンを使った租税回避対策や、企業に対する税制優遇措置を見直すことが求められます」
もちろん、私財を慈善事業に投じる富裕層もいる。サウジアラビアの王家出身のワリード王子は、株式や土地への投資で巨万の富を築き、「アラブのウォーレン・バフェット」と呼ばれる人物だ。そのワリード王子は、長年、自身が運営する財団を通じて35億ドル以上を貧困対策・災害支援などに充ててきたほか、死後はその10倍近くにあたる全財産を慈善事業に投じることを表明した。
一方で子孫へ資産を残すため、慈善事業のための財団や基金さえも節税の手段として使う富裕層がいるのも事実だ。
パナマ文書で明らかになったように、富裕層は、節税のためにタックスヘイブンもフル活用する。文書には、中国の習近平国家主席の親族、ロシアのプーチン大統領の親友などのほか、俳優のジャッキー・チェン、プロサッカー選手のリオネル・メッシの名もあり、富裕層の間で広く節税が行われていることがわかった。