1歳の夏になると、彼らの情況は一変します。騎乗馴致といって、人を乗せる訓練が始まります。ここが馬にとって最初の苦難(?)です。紐を着けられたり鞍を背負わされたり、急にがんじがらめになるんですね。中学生になると制服を着て、校則も厳しくなることに似ています。「涼しくなっていいなと思ってたら、どうして急に厳しくなるんだろう」などと感じているのではないでしょうか。
こうした中で、まず人を乗せることに慣れ、続いて常歩、速歩、駆歩などの騎乗運動に入ります。走り方がスムーズか、騎乗者の言うことをよく聞くか、走ることに対して前向きかどうかなどがチェックされます。
2歳になって牧場から旅立つまでは、生産地で黙々と調教を積んでいくのです。
●すみい・かつひこ/1964年石川県生まれ。中尾謙太郎厩舎、松田国英厩舎の調教助手を経て2000年に調教師免許取得。2001年に開業、以後15年で中央GI勝利数23は歴代2位、現役では1位(2016年5月29日終了時点)。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、馬文化普及、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカ、エピファネイア、ラキシス、サンビスタなど。
※週刊ポスト2016年6月17日号