山口組の分裂騒動から両派の抗争が続いているが、5月31日に岡山市で池田組の高木忠若頭が射殺された事件で、捜査関係者の間では早い段階から事件と「弘道会」の関連が注視されていた。事件の3日後には、兵庫県警が神戸市内にある弘道会の関係先に家宅捜索に入っている。
「表向きは弘道会傘下の組織の組長が起こした暴行事件に絡んでの捜索と発表されましたが、タイミングからして岡山の射殺事件に関する情報収集が県警サイドの目的だったとみられています」(地元紙記者)
実際、6月5日には池田組幹部射殺事件の実行犯として、岡山南署に弘道会傘下の高山組組員である山本英之・容疑者が出頭。殺人・銃刀法違反容疑で逮捕されている。
なぜ早くから弘道会の名前が挙がっていたのか。暴力団の実態に詳しいジャーナリスト・伊藤博敏氏が解説する。
「名古屋市に本部を置く弘道会は、六代目山口組の司忍・組長、ナンバー2で現在収監中の高山清司・若頭の出身母体であり、現在は竹内照明・会長(六代目山口組若頭補佐)がトップです。六代目側の中核的組織であり、抗争に備えての徹底した情報収集網、いざ抗争が始まった時に一気に相手を攻め立てる手法を高山若頭が中心になって構築してきたことで知られています。
今回の池田組幹部が射殺された事件でも、現場近辺を弘道会の人物が事前に調査をしていたという情報があります」
その弘道会の特質を象徴する存在といわれるのが、精鋭メンバーで構成されてきた極秘戦闘組織「十仁会」だ。伊藤氏が続ける。
「十仁会には、弘道会の系列組織から知力と体力を備え、組織への忠誠心の高い人員が選ばれてきた。尾行や盗聴などの“隠密行動”を取ることになるので、選抜にあたっては前科がなく、対立する組織や警察にマークされていないことも重視されます。また、いざ抗争になった時のために海外で武器を扱う訓練を積んでいるともいわれている」
そうした情報収集によって、対立組織の事務所やフロント企業の所在地などはもちろんのこと、幹部一人ひとりの自宅、愛人宅、行きつけの飲食店などの場所を含む日々の行動パターンが細かくデータベース化され、必要になった際は迅速に情報が引き出せるようになっているというのだ。