この2年間で、国内の売上高上位100薬品(2014年度決算・日刊薬業調べ)のうち、16種類の薬で新たな副作用が報告されている。厚労省が医薬品添付書の「改訂指示」を出した薬品の中から、一般になじみのある「有名薬」を紹介する。
今年3月、世間を驚かせた医薬品添付文書の改訂があった。対象となったのは、頭痛から歯痛まで幅広く服用され、年間約500億円を売り上げる解熱鎮痛剤の「ロキソニン」だ。
PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)の調査後、厚労省は添付文書の「重大な副作用」に「小腸・大腸の狭窄・閉塞」を追記する改訂指示を出した。秋津医院の秋津壽男院長が解説する。
「ロキソニンは効き目がある半面、胃への負担が多く、胃潰瘍になることがあった。今回追加された副作用は、小腸や大腸に潰瘍ができて腸の管が狭くなり、内容物が詰まってしまうことで起きます」
腸閉塞は放置しておけば最悪の場合、死に至ることもある。医薬情報研究所の取締役で薬剤師の堀美智子氏が解説する。
「腸管が狭くなると、最初は下痢の症状が出て、その後に激しい腹痛が続きます。ガス(おなら)も便も出なくなるようなら直ちに医師の診察を受けましょう」
インフルエンザ治療薬として知られる「タミフル」には、突然の腹痛や下血を発症する「虚血性大腸炎」という副作用がある。高熱の苦しみから解放してくれる薬だが、そのリスクがあることは把握しておく必要がある。
2011年にアルツハイマー型認知症の新しい治療薬として約10年ぶりに登場した「メマリー」は、認知症患者の増加とともに処方が増え、年間約368億円を売り上げる。
この薬は2015年2月に 怠感や食欲不振をもたらす「肝機能障害」や、皮膚や目が黄色く変色する「黄疸」の副作用が追加された。認知症の薬は、副作用に気付きにくいという難点がある。
「認知症が進行していると、肝機能障害や黄疸に患者本人が気付かないまま放置してしまうケースがある。患者が言葉で直接的に体の異常を訴えられず、不機嫌になったり、いままでと違ったサインを示すことがあるので、周囲が注意しておきたい」(前出・堀氏)