政治資金の公私混同問題で“第三者”の検証が火に油を注ぎ、都議会では舛添要一・知事への厳しい追及が続く。舛添氏の辞任は不可避とみて「次の都知事」を巡る情報が錯綜する中で、思いがけないシナリオが検討されているという。
前回の都知事選で推薦を出した自民党都連の議員からも、「あまりにセコい。セコすぎる」と問い詰められ、さらなる追及のための集中審議開催も決まった。崖っぷちに立たされる舛添氏だが、自民党都連関係者は「6月中に辞任する可能性は低い」と説明する。
「後任探しが難航している。自公で推薦を出すには、野党候補に知名度で負けず、スキャンダルと無縁の人間でなければいけない。猪瀬(直樹・前都知事)、舛添と2人続けて醜聞辞任が続くから、手を挙げる人も少ない。
いずれにせよ7月10日の参院選前に辞められると選挙にマイナスなので、舛添氏には8月のリオ五輪閉会式出席を花道に辞めてもらうのが一番だ。それまでに後釜を決める」
そうした中で永田町・霞が関で浮上しているのが、総務省の事務方トップである桜井俊・次官をポスト舛添に担ごうとする動きだ。
桜井氏は1977年に東京大学法学部卒業後、旧郵政省に入省。総合通信基盤局長、総務審議官(郵政・通信担当)などを経て昨年、事務次官に就任した。
桜井氏の次官就任は、普通なら霞が関人事を取り上げないワイドショーでも大きく紹介された。桜井氏がジャニーズ所属の人気アイドルグループ「嵐」のメンバー・櫻井翔の父親だからである。女性週刊誌でも「翔くんのパパ」として何度も取り上げられ、女性も含めた知名度は霞が関ナンバーワンといっていい。
その桜井氏の名前が、なぜ次期都知事候補として挙がっているのか。
「金銭スキャンダルで見苦しい言い訳をする知事が続き、都民には“次は派手さはなくていいから、地道に政策に取り組んでくれる人がいい”という心理が生まれている。その意味で、次の都知事選では官僚出身という経歴が有利に働く。だから関係者の間で、霞が関官僚でとくに知名度が高い桜井氏の名前が挙がり、自治事務次官から都知事に転じた鈴木俊一氏のような安定した都政運営が期待されているのでしょう。
息子の櫻井翔も人気タレントというだけでなく、慶應義塾大学経済学部卒で日テレの『NEWS ZERO』でキャスターを務めるなど、知的で真面目なイメージがあるからプラスにはたらく」(政治評論家・小林吉弥氏)
しかも、「8月舛添辞任」ならタイミングはぴったりだ。安倍政権は6月に入って、霞が関の各省庁の幹部人事を固めているが、「桜井氏の後任も佐藤文俊・総務審議官に決まった。今月中には桜井氏が退任の運びとなる」(大手紙政治部記者)という状況だ。