世界最大のコンピューターゲーム見本市といえば、1995年より米国で開催されている業界関係者向けの「E3(Electronic Entertainment Expo)」が有名だ。例年、大手ゲームメーカーによる新作披露の舞台となり、世界中のゲームファンからも注目の的だったが、ここ数年、E3への関心は薄れているのが実情だ。
6月14日からロサンゼルスで始まった今年のE3も然り。ゲーム専門誌の記者がいう。
「かつては世界の主要ゲームメーカーが勢力を誇示するかのように、こぞって大きなブースを構え、会場を訪れる業界関係者やメディアの数も7万人を超えていた。それが近年では不参加を表明するメーカーも増え、E3自体の地位低下が叫ばれて久しい」
今年はアメリカの大手ゲームソフト販売会社であるEA(エレクトロニック・アーツ)やActivision(アクティビジョン)、さらにはディズニーキャラクターのゲーム化ライセンス事業を手掛けるDisney Interactive(ディズニー・インタラクティブ)など名だたるメーカーが参加を見送った。
なぜここまでE3は落ちぶれてしまったのか。エース経済研究所の安田秀樹氏は、こう分析する。
「アメリカで集中的に開催することに価値がなくなってきたといえます。以前のE3であれば、ゲームの最大市場であるアメリカから最新情報を流すことで、世界中に話題を振りまく効果がありました。しかし、最近ではインターネット動画も発達し、YouTubeで生中継を見ることだってできます。つまりE3の発信力が弱くなったのです。
また、地域によってユーザーが欲しがるゲームの内容も違うため、アメリカ市場向けだけの情報を発信するよりも、それぞれの地域に合わせて広告効果を狙おうとする動きも出ています。日本やヨーロッパでもゲームショーは行われていますからね。
そもそも、E3はその年の年末商戦に売るゲームの商談会という性格があるため、発売が年内に間に合わず、先々にズレ込みそうな最新ゲームを焦って発表しても、販売促進に繋がりにくい状況がありました」
日本のメーカーでも、例えば任天堂はE3会場での大規模な発表をここ数年行っていない。同社は次世代の家庭用ゲーム機「NX(開発コード名)」の発売を公言しており、E3に合わせてその詳細を発表するのではないかとも見られていた。しかし、結局は何も明かされなかった。
「NXの発売は来年3月と予告しているので、発表は今年の秋以降になるだろう。任天堂にとって発売時期をE3や年末商戦に合わせることよりも、ハード機の生産体制を整え、ソフトの数を充実させることのほうが大事。販売の“機会ロス”を出さないよう万全の準備をしている」(任天堂関係者)
一方、ハード陣営では米マイクロソフトとソニー・インタラクティブエンタテインメントが先進技術を駆使した新機種を発表したことで、E3の縮小傾向に歯止めがかかるのではないかとの期待もある。