習近平は最近、「習沢東」と呼ばれるほど、毛沢東を模した自身の偶像化や軍権掌握といった権力の一極集中を進めている。その独断専行ぶりを、ジャーナリストの相馬勝氏がレポートする。
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陝西省富平県。省都の西安市から約60km北東にある田舎町だが、いま国家プロジェクト級の大規模な建設工事が進んでいる。習近平の父、習仲勲の巨大墓苑だ。面積は2660万平方メートルと東京ドーム569個分がすっぽり入る。
富平県は習仲勲の生まれ故郷だけに、共産主義革命戦争を指揮、新中国建国に深く貢献し、副首相や党政治局員まで務めた業績を讃える「愛国主義教育基地」として、地元の陝西省政府の肝いりで昼夜兼行の突貫工事が行われているのだ。
さらに、習近平自身の本籍地も富平県であるため、建設を進める省政府指導者の心中には習近平の存在が深く投影されていることだろう。
そもそも習仲勲の遺骨は2005年、彼の遺言により、故郷の富平県の一角に散骨された。そこに小さな旧居が建てられ、仲勲を偲ぶ記念館となった。ところが、長男の習近平が2012年11月、党総書記に選出され最高指導者の座に就くと、風向きが変わってきた。
記念館を建てた当時の副県長が西安市副市長に異例の栄転となった。人口が80万人あまりの地方都市の副県長が、人口855万人以上の省都の副市長に抜擢されるのは通常ありえない。そこに、習近平の影が見え隠れする。
広大な敷地のなか、花崗岩の台座に大きな仲勲の石像が建てられたほか、旧居、記念館、墓地、陵園、広場など一大墓苑が建設される予定だ。これほどの広さの墓苑はかつての最高実力者、鄧小平のそれに次いで、中国では2番目だ。副首相級の仲勲の墓苑にしてはあまりに分不相応だとしか言いようがない。