かつてはプラスチックゴミを有害として不燃ゴミに分別することが多かったが、最近では燃やすゴミに分別する自治体が増えてきている。
日本全体が何でも燃やす方向になっている動きのなかで、ゴミの量ゼロを目指して世界的にも注目されている町がある。徳島県の空港から車で1時間半。濃い霧がたなびく山々に囲まれる上勝町だ。約1700人の町民が一体となってリサイクルに取り組んでおり、日本一分別が行き届いた町でもある。
エコバッグが認知されている一方、コンビニに行けばパン1つでもビニール袋に入れるのが当然。通販で商品を頼めば梱包材に丁寧に包まれた商品が段ボールに入って届く。雨の日にデパートで買い物すると雨除けのビニール袋をかぶせてくれるのも日本特有だ。
そんななか、ゴミをゼロにすると宣言した上勝町は、いったいゴミとどう向き合っているのか。ゴミ格差が生んだ歪みや矛盾に対する答えがあるかもしれないと、本誌記者は現地へ赴いた。
この町にゴミ収集車はない。あるのは町中央の『ゴミステーション』。町の人はそこにゴミを捨てに来る。
缶、新聞、段ボールなどはもちろんのこと、ビンやトイレットペーパーの芯、食品用ラップの硬い芯など、細かく分別するその数はなんと分別表を見ると51種類にものぼる。生ゴミは自宅で堆肥として処理するため、ゴミ集積場にありがちな生臭さはない。古着で作った財布などを売る場所や、もう使わないおもちゃを提供する場所もある。
今や世界は3Rのリデュース(Reduce―ごみを減らす)、リユース(Reuse―繰り返し使う)、リサイクル(Recycle―資源の再利用)に加えて、リフューズ(Refuse―不要なものは要らないと断る)が入った4Rの時代。
おもてなしが好きで、NOと言えない国民性もあってか、日本は4Rから大きく立ち遅れているが、上勝町は違う。
余計な包装もしないし、住民の中には「ゴミを出さないために」と布おむつや布ナプキンに切り替えたと話す人もいた。極力物を増やさず、ゴミを出さない。上勝町の生活は、今流行りの最小限のもので生きる“ミニマリスト”に通じるものがあるのかもしれない。
各地から視察に訪れる人も多いが、51種類の分別は、長く東京に住み慣れた記者には到底まねできるとは思えない。
「ゴミが減るのはもちろん、資源の売り払い収入が約300万円あります」と語るのは同町企画環境課の山城真希子さん。今は対象の紙資源を持ってくると、トイレットペーパーや紙ひもを進呈するなど一部還元という形で町民に届いているそうだ。