第24回参議院議員選挙が6月23日公示、7月10日投開票と決まった。経営コンサルタントの大前研一氏は、予定外のふりをしながら、実はすべて官邸のシナリオ通りの展開になったのではとみている。
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いよいよ参院選が迫ってきた。安倍晋三首相は通常国会が閉幕した6月1日の記者会見で消費税増税再延期と衆参同日選見送りを正式表明したが、永田町やマスコミは安倍首相の最終決断を見極めることができず、ぎりぎりまで右往左往していた。
しかし、実は安倍首相は増税再延期も同日選見送りも、早い段階から決めていたのではないかと思う。首相は増税再延期という“新しい判断”について「参院選を通じて国民の信を問いたい」「アベノミクスを力強く前に進めていくのか後戻りするのかを決める選挙だ」と述べたが、そう言えば圧勝した前回衆院選と同じ構図になる。「増税」や「後戻り」を望む国民はいないからだ。
ただし、増税再延期はアベノミクス失敗を印象づけることになるので、それを糊塗しなければならない。そのために利用されたのが伊勢志摩サミットとオバマ大統領の広島訪問だった、と見るべきだろう。
もともと安倍首相は消費税増税について「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り確実に実施する」と明言していた。前回総選挙の公約にもなっている。
しかし、熊本地震は大震災とまでは言えない。だから伊勢志摩サミットでリーマン・ショック前後と現在の経済指標を比較した図表を並べ、商品価格の下落率や新興国経済の低調などを根拠に経済危機を演出しようとしたのである。
だが、あの図表を作った役人がもし私の部下だったら、即刻クビにしているだろう。なぜなら、リーマン・ショックが起きた理由を全く理解していないからだ。