後頭部は真っ赤に鬱血し、髪の毛が抜け落ちている。顔には無数のアザが残り、臀部から足にかけて幾重にも刻まれた束縛痕──。愛娘の最期の姿を収めた写真を前に、母親(38才)の言葉は悲痛を極める。
「痛かったろう、つらかったろう…。これが殺人でなくてなんなのか。裁判で決着はつきました。でも、私たちの悲しみは生涯消えません」
「被告人を懲役10年に処す」──6月15日、宇都宮地裁で同市内の認可外保育施設「といず」の元経営者・木村久美子被告(59才)に有罪判決が下った。
事件が起きたのは、2014年7月26日。同託児所に3泊4日で預けられた山口愛美利ちゃん(生後9か月)が亡くなった。直接の死因は熱中症。預けた3日間で、体重は8.7kgから7.4kgに減っていた。
同施設の監督責任を問い、同年9月に木村被告を刑事告訴した両親は、情報を収集する過程で「といず」のおぞましい実態を知った。当時、本誌の取材に母親はこう語っている。
「食べさせたら排泄するからと、ご飯やミルクは最低限の量。しかも被告の親族が経営するコンビニからもらってきた賞味期限切れのパンと麺類を餌のように盛りつけただけ。電気代の節約のために、冷暖房も付けていなかった。お腹が空いて子供たちが泣き出しても、スタッフがひもで縛って放置していたそうです」
母親が元施設スタッフから提供されたという写真には、その言葉通りの光景が広がっていた。動物園の檻のごとき一角に、毛布やひもで手足を縛られ、いもむしのようにうつぶせで転がされる子供たち──。
「といず」はパンフレットで充実の環境を謳っていた。《安全と健康が第一》、《嘱宅医と連携》、《ホテルのようなラグジュアリーさ》。だが実態は、それらの宣伝文句が薄ら寒く聞こえるほどの地獄絵図だった。
後に、愛美利ちゃんは「といず」に預けられた初日に下痢をし、2日目以降38℃の高熱が出ていたにもかかわらず、適切な処置もないまま放置されていたことが判明している。今回の判決を受けて、愛美利ちゃんの両親は改めて思いを語った。
「この2年間は、長くつらい日々でした。何しろ現場は密室。スタッフは木村被告の家族です。口裏を合わせられたら覆すのは至難。当初、被告はSIDS(乳幼児突然死症候群)と主張していたんですが、裁判で状況が不利になるや、業務上過失致死を主張し始めた。これだと罰金刑で済んでしまう。あり得ない。天国の愛美利に顔向けできません。徹底的に闘おうと、心に決めて臨んだ裁判でした」(父親)